溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
新年の一カ月は瞬く間に過ぎ、本格的な真冬がやってきた。
例年よりも雪の日が多く、初売りで買った新しい手袋とブーツが大活躍する毎日だ。
「三藤さん、ちょっといいかな」
午後になってから雪の降り方が強まったようで、帰宅指示が出るほど酷くならなければいいと思っていたら、総務部長に呼ばれて席を立った。
「契約書の棚、最近開けたりした?」
「……必要があれば開けることもありますが、そんなに頻度は高くないと思います」
「そう……」
眉をひそめて困り顔の部長は、室内を見渡してから私を見た。
「実はね、機密文書が紛失しているんだ」
「えっ……全て、ですか?」
「いや、一社なんだけど大口案件でね」
「……すぐに探します」
頼むよ、と言われて自席に戻る。
まずは手近なところにないかと、徹底的に探した。