溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
部長がメールで詳細を報せてきた。
それは、うちの得意先との間で取り交わした契約とそれに伴う内容で、私はすかさずシステムにアクセスしてデータと記憶を照合した。
「畑中さん、ちょっといいですか?」
「はい」
新入社員の畑中さんも、来期になれば後輩が入ってくる。
私みたいに地味なタイプではなく、どちらかというと寿退社した奈緒美のような華やかな子だ。
素直だし、分からないことは聞いてくれるから、仕事も円滑に進められていたはずなのに……。
「この契約の契約書原本と関係書類を、管理ファイルに綴じてほしいって頼んだんだけど、覚えていますか?」
「はい。もちろんです」
「どこにありますか?」
いつものキャビネットにあるはずだと言われ、もう一度探しなおす。
該当するファイルや両隣のファイルはさっきも見たけれど、畑中さんと一緒に再確認することにした。