溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「……ない、ですね」
「他に思い当たるところないかな?」
「えーっと……」
畑中さんは真面目に仕事をしてくれる人だから、誤って他のファイルやキャビネットに保管してしまったのかもしれない。
だけど、年度ごとに管理しているから、二月のこの時期は約一年分のあらゆる書類があって、目星を付けずに探すのは避けたかった。
十六時になっても、定時が近付いても見当たらない。
今日中に探しておくように部長には言われているから、焦って頭が回らなくなってきそうだ。
そして、今日に限って畑中さんは風邪気味で、マスクをしている顔に疲労の色が見えてきて。
「大丈夫? 無理しないで先に帰っていいからね。雪で足元も悪くなってきてるし」
「平気です、これくらい」
と言ってくれたけれど、時折咳き込んだりしているし、表情まで熱を帯びているのが分かる。
「畑中さん、あとは私が探しておくから帰っていいよ」
「……すみません、本当に」
限界まで手伝ってくれた彼女のせいじゃない。
先輩としてきちんと管理しきれていない私の責任だ。