溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 窓の外は大粒の雪がふわりふわりと舞っているけれど、ひどく積もることはなさそうだ。


「もうひと頑張りしなきゃ」

 総務部は基本的に残業をする人が少なく、十九時になる頃にはとうとうひとりになってしまった。
 だけど、これで誰の目も気にせず探せる。

 キャビネットの扉を開け、くまなく探すことにした。
 ひとつずつファイルを捲って、関係のなさそうな書類の間にもないかを確認し続ける。


 そうして見つけれらないまま、気付けば終電も逃していて。


「……なんでないのよ」

 契約書くらい、再度対応してもらえば済むと考える人もいるだろうけど、汚損ではなく紛失となると話は変わってくる。それに、関係書類には今後の契約に係るに内容もあったはずで……これは会社の信用問題だ。


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