溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「よかった。無事でいてくれたら、それで十分だよ」
「……ごめんなさい」
「次からは連絡するか、俺の連絡を無視しないで」
「無視はしてないんです」
通知の量を思い出せば、彼がそう思うのも無理はないけれど。
「私、デスクに携帯を持ち込まないようにしていて……ロッカーにしまいっぱなしにしてて」
「本当、咲は真面目すぎるよ。悪い事じゃないけど、こういう時はちゃんと連絡してくれないと、俺が困る」
「ごめんなさい」
私の手を取り、いつの間にか積もっていた真っ白な雪の歩道を行く彼は、助手席にエスコートしてくれた。
「なにがあったかは、帰ったら聞くから」
「はい」
車通りの少なくなった夜道を、ヘッドライトが照らす。
彼が住まいにしているホテルまで、お互いあまり話すことはなかった。