溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
ホテルに到着しても、私の手はしっかりと握られ、引っ張るようにして歩く彼の背中に頼りがいを感じた。
部屋に入ると、先に帰宅した彼がいかに慌てていたのかが、目に見えるようで驚いた。
いつもならお酒を嗜むはずなのに、グラスすらテーブルに置かれていない。その代わり、私がいそうな場所を考えてくれたのか、メモが散らばっていて。
そこには、会社、花火大会の会場、彼の呉服店周辺、自宅……。近隣の病院にまで連絡を入れたようで、電話番号が残されている。
「咲に何かあったらって考えただけで、生きた心地がしなかった」
部屋の様子を茫然と見ている私に、彼は優しく声をかけ、肩を抱いた。