溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「これほど手に入れたいと思った恋は初めてなんだ。出会ってから、ずっと忘れられなくて……咲を俺のものにしたい」

 本気で想ってくれていると伝わる彼の瞳は、初めて彼を見かけた時よりも強く、私を射抜く。


「俺を信じて、ついてきてほしい」
「八神さん……」
「ここで、俺と暮らしてくれる?」
「……はい」

 返事を聞いた彼が、私をもう一度抱き寄せ、後ろ髪をそっと撫でた。




―――――
―――



「緊張しなくていいよ。何度か会ってるんだし、間違いなく歓迎されるだろうから」
「無理です……生きた心地がしません」

 四月の空の下、緊張する私の手を引き、着物姿の彼は慣れた様子で歩いていく。

 門扉から長く続く私道には、蕾が膨らんで色づいた桜の木が並んでいて春の便りを感じる。
 そして、手入れの行き届いた日本庭園の横を通り、初めて八神さんの実家を訪れた。


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