溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「一誠、覚悟ができたんだね?」
「はい。咲さんを生涯かけて幸せにします。そして、いずれは社を継いで、さらなる発展に尽力いたします」
会長でもある祖父の問いかけに、彼は凛々しい表情で言い切り、深々と頭を下げている。
生涯かけて幸せにする――。
その言葉だけで私の涙腺は緩み、指先でそっと押さえて零れるのを抑えながら、ともに頭を下げた。
「人生で一番緊張したかもしれません」
「大げさだなぁ。そんなに堅苦しいものでもなかったでしょ?」
彼の実家からホテルに戻り、着物を脱いでホッとしたら、一気に現実に戻った気分だ。
来週は私の実家へ挨拶に行くことになっている。両親には先に報告をしてあるけれど、特にお母さんは彼に会ったら驚くだろうな。
こんなに素敵な人が、私と生涯を共にしてくれるんだから……。