溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「オオカミって、どういう意味?」
「本当、咲は男を知らなさすぎ」


 あんなに紳士的で優しくて丁寧な男性が、“オオカミ御曹司”と言われているのが不思議だと思った。

 奈緒美には、今まで片想いばかりしてきたことも、初めてのキスが飲み会の盛り上がりで奪われたことも話してある。
 だけど、電車で時々乗り合わせる八神さんにひと目で恋に落ちてしまったのは伏せてきた。
 それなのに、彼女は彼のことを知っているようだ。


「八神グループの八神 一誠って言ったら、世間の女子の間ではオオカミ御曹司で有名だよ。家柄、外見、学歴、収入……全部が揃ったレア男子だけど、女関係だけはかなり最悪」
「えっ、そうなの!?」
「紳士と思わせて接近、あらゆる手を使ってベッドに持ち込んで、同意の元で……」

 その先をあえて言葉にしなかった彼女は、私に察するようにと目を向けてきた。


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