溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「あなたは、お隣のStationiaさんの方ですか?」
「はい」
私を連れて歩く彼は、とても背が高い。百五十八センチの私が見上げると、夜空を背負っているように見える。
それに、今夜も端整すぎて見惚れてしまうほどの美貌は、容易く私の鼓動を急かした。
ナチュラルに整えられた黒髪は、スーツ姿に爽やかさを加えていて。
すっきりとした鼻梁と輪郭、ちょっと薄めの唇、切れ長だけど優しそうな瞳が私を見下ろしてくる。
そして、真摯な表情の彼は、とても誠実そうだ。
「怖い思いをさせてしまって申し訳ありません」
「いえ……御社の関係者だと勘違いされたようで」
「決してあってはならないことですので、私の方で誠心誠意お詫びさせていただきます」
混み合う会場を足早に抜けて駐車場にやってくると、一台の車の前で彼が止まった。