溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

「大切な接待の途中だったんですよね? 私のことはどうぞお構いなく、お仕事に戻られたほうが……」
「いいんですよ。私がするべきことはもう済ませてありますので、あとは余興みたいなものです。それより、薄着なのに濡れてしまった、あなたのほうが心配です」

 優しい瞳に吸い込まれそうで、きゅんとしてしまった。
 イケメンで紳士的な男性に、こんなに大切に扱われたことはない。
 それに、待たせていた黒塗りの大型セダンに悠々と乗っている姿は、明らかに役職者だと思う。運転手付きの社用車を使える人なんて、相当重要なポストにいるはずだ。


「っ、くしゅっ!!」
「大丈夫ですか?」

 スーツジャケットだけでは足りないと思ったのか、彼は傍らに畳まれていたブランケットを膝に広げてくれた。
 経験したことのない緊張のせいでくしゃみが出たなんて言えず、お礼を言ってごまかした。

 こんなに優しくされると、もっと好きになってしまいそう。


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