溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 車で十五分もかからずに目的地へ到着したらしい。
 停車するなり、運転手が外からドアを開けて、彼と私を出してくれた。


「お気遣いありがとうございます」
「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます」

 一流企業の役職者付運転手ともなると、私のような人間にまで完璧に振る舞う教育がなされているようだ。


「連絡を入れるので、それまでは待機していてください」
「かしこまりました」

 運転手にそう告げた彼が私の手を引いて、歩を進める。
 だけど、既視感のある景色にゆっくり空を仰ぐと、彼が住まいにしているホテルの前だった。

 もしかして、また彼とあんなことを?
 ……って、初めてのその経験が記憶にはないけれど、起きたら揃って一糸纏わぬ姿だったはずで。


「そう緊張しないでください。どこに行くにしても、着物では大変でしょうから、今日のところは私の住まいで話しましょう」

 今日のところは……って、また次も会うみたいな言い方をされて疑問が残った。


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