溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~

 ホテルからホテルへ移動して過ごすなんて経験はなく、なんとも不思議な気分。
 彼の部屋に行かなくたって、さっきのホテルに併設していたカフェや、他のレストランだってあったのに。


 それに、彼は私にもう二度と会うつもりはなかったはずなのに、また自宅に招く心境が分からない。


「あの、やっぱりご自宅にお邪魔するのは気が引けますので、ここのホテルのラウンジにでも行きませんか?」
「ダメです」

 到着していたエレベーターに連れ込まれるように乗り込むと、彼が二十一階のボタンを押した。


「誰の目にも触れない空間で、きちんと話をさせてください」

 真剣なまなざしに心が揺れる。
 最悪で最低で、軽薄な女好きの御曹司になんて、二度と会わないって決めてきたのに……本当のあなたは、どっちなの?


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