溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
「少し、お酒でも飲みましょう。昼間からアルコールを飲むのは贅沢な気分になれますし」
「ぜ、贅沢って」
ただでさえ、彼が暮らしているこの部屋にお邪魔しているだけでも十分贅沢だ。それに、八神ブランドの訪問着を着て、彼の前にいられることも。
「この前はシャルドネでしたよね。今日はどうしましょうか」
「わ、私は結構です」
リビングの一角に設けられたワインセラーを開けた彼は、なにかを思いついたように戸を閉めて、キッチンへ向かっていく。
正直言って、お酒には疎い。語れる知識もなければ、自分の好みすら答えられない。
それに、酔ってしまってまた泊まっていくような流れになるのは避けたくて、すかさず遠慮の意思を伝えた。