溺れて染まるは彼の色~御曹司とお見合い恋愛~
彼が出してきたのは、立派な化粧箱に入ったお酒だ。
「昼間からワインっていう気分でもなかったので、シャンパーニュにしましょう」
「そんな高価そうなお酒、もったいないです。それに私は遠慮します」
「いいんですよ、今日みたいな日はこれがいい。ひとりで飲むのもつまらないので、ちょっとだけ付き合ってもらえませんか?」
彼は迷うことなくボトルを出し、シャンパンクーラーやグラスの用意も手際よく済ませ、ソファにいる私の隣に座った。
いかにも高級そうなシャンパーニュのボトルには、美しい紋章が施されている。手慣れた様子で丁寧に針金を緩めた彼は、シュッと小さな音だけを鳴らしてコルクを抜いた。
「では、お見合いに乾杯」
「……乾杯」
お見合いに乾杯って、どういう意味なんだろう。
疑問ばかりだけど、彼に倣ってグラスを傾けると、梨とドライフルーツのようなフルーティーさを感じた。
「美味しい……すごく美味しいですね、これ」
「よかった。気に入ってくれて」
一体いくらするものなんだろう。八神さんが用意しているものはすべてが高級そうで、値段を見聞きするのも怖いくらいだ。