生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
62.生贄姫は魔導師と対峙する。
騎士団闘技場。
そこは、闘技場全体に大規模な魔法がかけられており、訓練後はありとあらゆる事象が元通りになるため、対魔法戦の訓練を行う際使われることが多い。
つまり、この闘技場内部であればどれほど大規模な魔法を行使しても問題なく、例えば相手を殺してしまったとしても、実際は無かったことになる。
その騎士団闘技場を貸し切って、本日は第一騎士団特殊枠所属の大魔導師と面会する事となった。
リーリエ側の立会人は第二騎士団隊長テオドール、副隊長ゼノの2名。
「……来ましたね」
人の気配に顔を上げれば入口から3人の人物が入って来た。
一人は真っ黒な猫耳フードを被った銀髪赤眼の少女。暗めの赤を基調としたゴスロリ系ミニ丈ドレスをまとい腕にウサギの人形を抱えている。
真ん中にいる赤い髪に赤眼をした女性とその側に控えるように立っている明るい緑の髪に赤眼をした女性が並ぶ。
妙齢の女性2人は黒の杖を手に携えており、白と黒を基調とした第一騎士団の制服を着ているが、足と絶対領域がいい感じに見えるように各々改造され、赤のヒールブーツをカツカツと響かせその存在を主張していた。
「ご機嫌よう、犬っころ。コチラを呼び出すだなんて、いい度胸ね。どのツラ下げてそんな格好でいらしたのかしら?」
開口一番に真ん中の女性が見下すようにそう言い放つ。
リーリエは翡翠色の目を大きく見開く。
近づいてきた彼女は黒い杖をリーリエの顎にあて、くいっと上を向かせる。
「ああ、本当に"翡翠色"。アシュレイ家の劣等種たる、血統だけで選ばれただけのただの人質の犬っころが、妃殿下などと呼ばれて調子に乗ったのかしら?」
敵意を隠すことのない彼女は一言も発しないリーリエを嘲笑うかのように蔑める。
「怯えた仔犬は人語すらも紡げない? 隊長、副隊長格を侍らせれば我らが大人しく従うとでも? 浅はか極まりないわね」
一触即発の緊張感の中、リーリエはにやけそうになるのを必死に抑えていた。
『セクシー系美人からの顎クイ。初手からご褒美かな!?』
などとリーリエが考えてるなんて、誰も思うまい。
が、テオドールだけは呆れたようにリーリエを見て小さくため息をついた。
リーリエ、絶対楽しんでいるだろうと。
この程度でリーリエが屈するはずもない事を知っているテオドールは、静観することに決めた。
そこにあるのは、彼女に対しての絶対的信頼。
『見ていてくださいね。本日の私、ちょっとすごいですよ?』
そう言って笑ったリーリエが、負けるはずなどないのだから。
そこは、闘技場全体に大規模な魔法がかけられており、訓練後はありとあらゆる事象が元通りになるため、対魔法戦の訓練を行う際使われることが多い。
つまり、この闘技場内部であればどれほど大規模な魔法を行使しても問題なく、例えば相手を殺してしまったとしても、実際は無かったことになる。
その騎士団闘技場を貸し切って、本日は第一騎士団特殊枠所属の大魔導師と面会する事となった。
リーリエ側の立会人は第二騎士団隊長テオドール、副隊長ゼノの2名。
「……来ましたね」
人の気配に顔を上げれば入口から3人の人物が入って来た。
一人は真っ黒な猫耳フードを被った銀髪赤眼の少女。暗めの赤を基調としたゴスロリ系ミニ丈ドレスをまとい腕にウサギの人形を抱えている。
真ん中にいる赤い髪に赤眼をした女性とその側に控えるように立っている明るい緑の髪に赤眼をした女性が並ぶ。
妙齢の女性2人は黒の杖を手に携えており、白と黒を基調とした第一騎士団の制服を着ているが、足と絶対領域がいい感じに見えるように各々改造され、赤のヒールブーツをカツカツと響かせその存在を主張していた。
「ご機嫌よう、犬っころ。コチラを呼び出すだなんて、いい度胸ね。どのツラ下げてそんな格好でいらしたのかしら?」
開口一番に真ん中の女性が見下すようにそう言い放つ。
リーリエは翡翠色の目を大きく見開く。
近づいてきた彼女は黒い杖をリーリエの顎にあて、くいっと上を向かせる。
「ああ、本当に"翡翠色"。アシュレイ家の劣等種たる、血統だけで選ばれただけのただの人質の犬っころが、妃殿下などと呼ばれて調子に乗ったのかしら?」
敵意を隠すことのない彼女は一言も発しないリーリエを嘲笑うかのように蔑める。
「怯えた仔犬は人語すらも紡げない? 隊長、副隊長格を侍らせれば我らが大人しく従うとでも? 浅はか極まりないわね」
一触即発の緊張感の中、リーリエはにやけそうになるのを必死に抑えていた。
『セクシー系美人からの顎クイ。初手からご褒美かな!?』
などとリーリエが考えてるなんて、誰も思うまい。
が、テオドールだけは呆れたようにリーリエを見て小さくため息をついた。
リーリエ、絶対楽しんでいるだろうと。
この程度でリーリエが屈するはずもない事を知っているテオドールは、静観することに決めた。
そこにあるのは、彼女に対しての絶対的信頼。
『見ていてくださいね。本日の私、ちょっとすごいですよ?』
そう言って笑ったリーリエが、負けるはずなどないのだから。