生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
「私は、テオドール様には誰よりも幸せになって欲しいと願っています。だから、選択肢は間違えちゃ……ダメ、ですよ」
リーリエは翡翠色の瞳に涙を浮かべて言葉を絞る。
「私は、あなたが上を目指すならいずれ足枷になる。そうでなくても害にしかならない。あなたの未来を、奪う事が怖い」
「リーリエ?」
「……っ、……なの」
聞き取れないほど小声でリーリエはつぶやく。
「俺が嫌いか?」
リーリエは首を横に振る。そんな事、あるわけがない。
「……"ステータス"……オープン。偽装、解除」
リーリエはステータス画面を表示させ、スキルの偽装を解除する。
リーリエはテオドールに自身のスキルを明かす。
「暗殺者、なの。私は生まれつき殺しに長けたスキルを持っている。本当は、ここに居てはいけないの」
一度スキルが発動してしまえば、必ず誰かを殺してしまう。スキル特性を応用したおかげで人体構造にも医学にも薬学にも明るくなった。でもそれらの根幹にあるのは全て、誰かを殺すための技術。
分かるのだ。誰のどこをどうすれば、その人が死ぬのか。
「スキルが暴発して、万が一でもあなたをターゲットにしてしまったら私はあなたを殺すまで狙い続ける。そうでなくても、暗殺者を、傍におけばあなたはそれだけで反逆罪と見なされる。このスキルを所有する私は生まれた時から潜在犯なの。そして、実際私や公爵家、国家を狙ってきた相手をこの手で数えきれないくらい屠っている。魔術師として誰かを幸せにしたいといいながら、その裏で両手を赤く染めている。そんな、私が幸せを望んでいいわけがないでしょう」
リーリエはテオドールの青と金の目を見つめる。
「夢を見させてくれて、ありがとう。もう、十分だから。私は、一人で立てるから」
いつもみたいに、綺麗に笑う事ができなくてリーリエは涙を拭う。
「終わりにしましょう。夢は、夢でしかないもの。ヘレナート様の魔法陣のフラグを回収して、しかるべきときがきたら、何も残さずあなたの前からきれいに消えるから。そしたら、今度はちゃんと一緒に幸せになれる誰かを選んで、沢山笑って、平穏な毎日を送って欲しい。テオドール様がそうなれること、どこかで祈るから。だから」
テオドールはリーリエの華奢な身体を抱きしめた。
「多分、そうなんだろうと思っていた」
過去、リーリエと同じスキルを持つものに何度か出会ったことがある。
彼女が公爵令嬢でなかったなら、そのスキルは有用だったかもしれない。
「それでも、俺はリーリエがいい。他の誰かも選択肢も未来もいらない」
「一時の感情で、選んじゃダメ……だよ。あなたの前には沢山の選択肢が、未来が、可能性があって、私はそれを捨てさせたくないのです」
自分はそれを捨てるくせに、テオドールには選べという。
「選んだ未来の責任は自分で取る。取れるようになる。リーリエにそのスキルは今後使わせないし、バレさせない。仮に暴発したとしても、生憎と俺は命を狙われるのに慣れている。そして死んでやった事はない」
「……慣れちゃダメでしょ」
呆れたようなリーリエの泣き声。
テオドールは少し身体を離し、リーリエの翡翠色の瞳を覗き込む。
リーリエは翡翠色の瞳に涙を浮かべて言葉を絞る。
「私は、あなたが上を目指すならいずれ足枷になる。そうでなくても害にしかならない。あなたの未来を、奪う事が怖い」
「リーリエ?」
「……っ、……なの」
聞き取れないほど小声でリーリエはつぶやく。
「俺が嫌いか?」
リーリエは首を横に振る。そんな事、あるわけがない。
「……"ステータス"……オープン。偽装、解除」
リーリエはステータス画面を表示させ、スキルの偽装を解除する。
リーリエはテオドールに自身のスキルを明かす。
「暗殺者、なの。私は生まれつき殺しに長けたスキルを持っている。本当は、ここに居てはいけないの」
一度スキルが発動してしまえば、必ず誰かを殺してしまう。スキル特性を応用したおかげで人体構造にも医学にも薬学にも明るくなった。でもそれらの根幹にあるのは全て、誰かを殺すための技術。
分かるのだ。誰のどこをどうすれば、その人が死ぬのか。
「スキルが暴発して、万が一でもあなたをターゲットにしてしまったら私はあなたを殺すまで狙い続ける。そうでなくても、暗殺者を、傍におけばあなたはそれだけで反逆罪と見なされる。このスキルを所有する私は生まれた時から潜在犯なの。そして、実際私や公爵家、国家を狙ってきた相手をこの手で数えきれないくらい屠っている。魔術師として誰かを幸せにしたいといいながら、その裏で両手を赤く染めている。そんな、私が幸せを望んでいいわけがないでしょう」
リーリエはテオドールの青と金の目を見つめる。
「夢を見させてくれて、ありがとう。もう、十分だから。私は、一人で立てるから」
いつもみたいに、綺麗に笑う事ができなくてリーリエは涙を拭う。
「終わりにしましょう。夢は、夢でしかないもの。ヘレナート様の魔法陣のフラグを回収して、しかるべきときがきたら、何も残さずあなたの前からきれいに消えるから。そしたら、今度はちゃんと一緒に幸せになれる誰かを選んで、沢山笑って、平穏な毎日を送って欲しい。テオドール様がそうなれること、どこかで祈るから。だから」
テオドールはリーリエの華奢な身体を抱きしめた。
「多分、そうなんだろうと思っていた」
過去、リーリエと同じスキルを持つものに何度か出会ったことがある。
彼女が公爵令嬢でなかったなら、そのスキルは有用だったかもしれない。
「それでも、俺はリーリエがいい。他の誰かも選択肢も未来もいらない」
「一時の感情で、選んじゃダメ……だよ。あなたの前には沢山の選択肢が、未来が、可能性があって、私はそれを捨てさせたくないのです」
自分はそれを捨てるくせに、テオドールには選べという。
「選んだ未来の責任は自分で取る。取れるようになる。リーリエにそのスキルは今後使わせないし、バレさせない。仮に暴発したとしても、生憎と俺は命を狙われるのに慣れている。そして死んでやった事はない」
「……慣れちゃダメでしょ」
呆れたようなリーリエの泣き声。
テオドールは少し身体を離し、リーリエの翡翠色の瞳を覗き込む。