生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
魔術省の弾き出した結果は、夢魔が子ども達を魔力の補給源にしていた、とされているが、それでは説明のつかない点が多く、亜種の夢魔はそうであると言い切るためだけに用意されていた生贄のようだった。
見る人間が見れば分かる用意された筋書きの矛盾。
「人災、という可能性。クロは知っていたの?」
リーリエがフィオナに尋ねた、"使役できない魔獣を人的に操る方法"その答えを知っているのかと赤眼がテオドールに問う。
「……その答えを、多分今探している」
目を覚ましたリーリエは、事の顛末を聞いて『そうですか』とだけ言って、申し訳無さそうに笑った。
無理をしないかと心配になったが、落ち込むでもなくリハビリに取り組んでいたところを見るとおおよその予測はついていたのだろう。
「ルーくんが、自ら事実確認に出向いてるって聞いた。ホント?」
「リーリエが怪我したからな。アレであいつ直情型だから」
「憐れ。ルーくん笑顔で廃人生成する」
本当は身柄を拘束した後に、騎士団上層部の不正や魔術省との関連等吐かせるまでがテオドールに課せられた任務だったのだが、リーリエが怪我を負ったことでブチギレしたルイスに代われと言われたので、役目を引き渡した。
「激おこのルーくん、怖い。詰んだ」
若干24歳で事実上国のトップに上り詰めた天才が唯の優男なわけがなく、彼による事実確認と言う名の取り調べは、知っているものからすれば"詰んだ"の一言に尽きる。
「まぁ、表だって出せない事実は全部綺麗に葬り去るさ。そのために俺がいる」
ルイスが動いた事で出てきている事実は、そのほとんどが公にできない内容で。
公開できる内容への筋書き変更を請け負うテオドールの暗躍は現在進行形で続いている。
「……物騒な、きょうだい」
小声でぼそっとつぶやくフィオナに、
「あんたがやれって言ったんだろうが」
と呆れた口調で返すテオドール。
「フィーは背中を押しただけ。決めたのはクロ」
見上げてくる赤眼は、非常に満足そうで、本当に喰えない奴だとため息をつく。
「フィーのためにも風通し良くして欲しい。国家公務員の身分、気に入ってるし。……今更、冒険者戻る……のは、しんどい」
「永遠の14歳じゃなかったのか?」
「女の子に数字がつく話は御法度。クロ、デリカシーない」
頬を膨らませぷんすこと怒りながらローブの長い袖を振り回す。
そんなやり取りをしているうちに最下層まで降りきり、ドアの前でフィオナは鍵を手のひらに表出させる。
「フィオナ・クローディアの名において、"解錠"」
そしてフィオナはドアを開ける。
この異界の書庫は大魔導師の称号を持つ者しか開ける事ができないらしい。
「出る時は、いつも通り普通に出られるから。いってらっしゃい」
そう言ってフィオナはテオドールを見送った。
見る人間が見れば分かる用意された筋書きの矛盾。
「人災、という可能性。クロは知っていたの?」
リーリエがフィオナに尋ねた、"使役できない魔獣を人的に操る方法"その答えを知っているのかと赤眼がテオドールに問う。
「……その答えを、多分今探している」
目を覚ましたリーリエは、事の顛末を聞いて『そうですか』とだけ言って、申し訳無さそうに笑った。
無理をしないかと心配になったが、落ち込むでもなくリハビリに取り組んでいたところを見るとおおよその予測はついていたのだろう。
「ルーくんが、自ら事実確認に出向いてるって聞いた。ホント?」
「リーリエが怪我したからな。アレであいつ直情型だから」
「憐れ。ルーくん笑顔で廃人生成する」
本当は身柄を拘束した後に、騎士団上層部の不正や魔術省との関連等吐かせるまでがテオドールに課せられた任務だったのだが、リーリエが怪我を負ったことでブチギレしたルイスに代われと言われたので、役目を引き渡した。
「激おこのルーくん、怖い。詰んだ」
若干24歳で事実上国のトップに上り詰めた天才が唯の優男なわけがなく、彼による事実確認と言う名の取り調べは、知っているものからすれば"詰んだ"の一言に尽きる。
「まぁ、表だって出せない事実は全部綺麗に葬り去るさ。そのために俺がいる」
ルイスが動いた事で出てきている事実は、そのほとんどが公にできない内容で。
公開できる内容への筋書き変更を請け負うテオドールの暗躍は現在進行形で続いている。
「……物騒な、きょうだい」
小声でぼそっとつぶやくフィオナに、
「あんたがやれって言ったんだろうが」
と呆れた口調で返すテオドール。
「フィーは背中を押しただけ。決めたのはクロ」
見上げてくる赤眼は、非常に満足そうで、本当に喰えない奴だとため息をつく。
「フィーのためにも風通し良くして欲しい。国家公務員の身分、気に入ってるし。……今更、冒険者戻る……のは、しんどい」
「永遠の14歳じゃなかったのか?」
「女の子に数字がつく話は御法度。クロ、デリカシーない」
頬を膨らませぷんすこと怒りながらローブの長い袖を振り回す。
そんなやり取りをしているうちに最下層まで降りきり、ドアの前でフィオナは鍵を手のひらに表出させる。
「フィオナ・クローディアの名において、"解錠"」
そしてフィオナはドアを開ける。
この異界の書庫は大魔導師の称号を持つ者しか開ける事ができないらしい。
「出る時は、いつも通り普通に出られるから。いってらっしゃい」
そう言ってフィオナはテオドールを見送った。