生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
92.生贄姫は奪い合いされる。
この物語のヒロインは、ヴァイオレットなのだとリーリエは思う。
じゃあ、彼女とレオンハルト、大賢者を繋ぐピースはどこにあるのだろう?
リーリエはそれをずっと探している。
ヴァイオレットの願いは、一体なんだろう?
大量の資料を読み解きながら不謹慎にもワクワクしてしまっている自分に気づき、リーリエは自然と笑みが溢れる。
ああ、たとえこの世界から自分が嫌われているのだとしても、やっぱり私はこの世界とこの世界に生きる推し達とそこに繰り広げられる物語が好きみたいだ、と。
リーリエが調べ物をしている執務室の入り口で、ラナはテオドールを止める。
「今は近づかない方がいいですよ。随分と楽しそうに考察されてますので」
ああなったお嬢様には話が全く入らないのです、と淡々と話すラナはテオドールに引き取るよう伝える。
ラナは礼儀正しく、公爵家の使用人として申し分ない働きをしている。テオドールへの牽制も不敬とは言えないレベルだ。
が、あまりにリーリエへの執着が強い。
そろそろこの関係も終止符を打つべきだろうとテオドールは腹を括る。
「なるほどな」
と頷くテオドールは、ラナを無視してリーリエの執務室に入る。案の定集中しているリーリエはテオドールに気づかないが、それはいつもの事なので別に気にしていない。
「テオドール殿下、お引き取りを」
ラナが慌てて追いかけてきたが、テオドールは構わずリーリエを後ろから抱きしめて資料を取り上げる。
「リィ、戻ってこい。食事はちゃんと摂る約束だろう」
「テオドール殿下!」
強めにラナが嗜めたのと、
「あれ、旦那さま。もう、お帰りの時間でした?」
リーリエの意識が引き戻されたのはほぼ同時だった。
「リィ、集中するのも悪くないが」
「仕事は程々に、ですね。分かってますよ。もう、みんなにあんな風に心配かけたくないですし」
ふふっと笑ったリーリエは花が綻ぶように笑って、
「おかえりなさいませ、旦那さま」
そう言ってテオドールを出迎えた。
「リィ様が、あの集中したら平気で4〜5日でも引き篭もるリィ様が人の言う事聞いて手を止めるなんて」
信じられないものを見たかのように固まるラナに、
「失礼なっ、そんな子どもの頃の話持ち出さないでよ」
そう抗議するリーリエ。
「いや、割と最近もあっただろうが」
と呆れたようにテオドールは苦笑して、
「もう、この際だ。言いたいこと全部言っとけ。不敬罪なんて、どうせこの屋敷では成立しないから」
そう付け足した。
じゃあ、彼女とレオンハルト、大賢者を繋ぐピースはどこにあるのだろう?
リーリエはそれをずっと探している。
ヴァイオレットの願いは、一体なんだろう?
大量の資料を読み解きながら不謹慎にもワクワクしてしまっている自分に気づき、リーリエは自然と笑みが溢れる。
ああ、たとえこの世界から自分が嫌われているのだとしても、やっぱり私はこの世界とこの世界に生きる推し達とそこに繰り広げられる物語が好きみたいだ、と。
リーリエが調べ物をしている執務室の入り口で、ラナはテオドールを止める。
「今は近づかない方がいいですよ。随分と楽しそうに考察されてますので」
ああなったお嬢様には話が全く入らないのです、と淡々と話すラナはテオドールに引き取るよう伝える。
ラナは礼儀正しく、公爵家の使用人として申し分ない働きをしている。テオドールへの牽制も不敬とは言えないレベルだ。
が、あまりにリーリエへの執着が強い。
そろそろこの関係も終止符を打つべきだろうとテオドールは腹を括る。
「なるほどな」
と頷くテオドールは、ラナを無視してリーリエの執務室に入る。案の定集中しているリーリエはテオドールに気づかないが、それはいつもの事なので別に気にしていない。
「テオドール殿下、お引き取りを」
ラナが慌てて追いかけてきたが、テオドールは構わずリーリエを後ろから抱きしめて資料を取り上げる。
「リィ、戻ってこい。食事はちゃんと摂る約束だろう」
「テオドール殿下!」
強めにラナが嗜めたのと、
「あれ、旦那さま。もう、お帰りの時間でした?」
リーリエの意識が引き戻されたのはほぼ同時だった。
「リィ、集中するのも悪くないが」
「仕事は程々に、ですね。分かってますよ。もう、みんなにあんな風に心配かけたくないですし」
ふふっと笑ったリーリエは花が綻ぶように笑って、
「おかえりなさいませ、旦那さま」
そう言ってテオドールを出迎えた。
「リィ様が、あの集中したら平気で4〜5日でも引き篭もるリィ様が人の言う事聞いて手を止めるなんて」
信じられないものを見たかのように固まるラナに、
「失礼なっ、そんな子どもの頃の話持ち出さないでよ」
そう抗議するリーリエ。
「いや、割と最近もあっただろうが」
と呆れたようにテオドールは苦笑して、
「もう、この際だ。言いたいこと全部言っとけ。不敬罪なんて、どうせこの屋敷では成立しないから」
そう付け足した。