生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
ラナの手助けを受け、情報を整理し終わったリーリエはいくつもいくつも点在するキーワードを繋げながら、物語の仮説を立てる。
この物語が結末を迎えたとき、ストーリーのその先空白の中で自分は何を手にするのだろう? と、リーリエは自身の指先を見つめた。
「リィ、ルイスが来たが」
テオドールの声かけに顔を上げたリーリエは、
『リィ様の描く未来が、幸せなものでありますように』
そう言って帰って行ったラナの耳打ちを思い出し、赤面しそうになる。
『面倒臭くて拗らせてるリィ様に付き合ってくださる方など、テオドール殿下以外いないと思いますので、連れ戻される前に既成事実を作っておく事をお勧めします』
テオドールと何を話したのかは知らないが、テオドールの事を気に入ったらしいラナの余計な助言のせいで、青と金の目と合うだけで激しく逃げたい衝動に駆られる。
「どうした、リィ? 顔が赤いが」
「なんでもないです、すみません」
口元を覆って目を逸らすリーリエに訝しげな視線を送ってくるテオドール。
そんな彼の視線を感じ、居た堪れないリーリエは、
『……既成事実って。もうっ!』
意識するなというほうが無理だ。本当に余計な置き土産をとラナのことを恨めしく思った。
☆
複雑そうな表情を浮かべ、応接室で待っていたルイスに、リーリエは淑女らしくカテーシーをして見せる。
「アルカナ王国全権代理者、ルイス王太子にカナン王国が魔術師リーリエ・アシュレイがご挨拶申し上げます」
魔術師の正装はしていないが、親しい友人としてではなく、魔術師として名乗るリーリエにルイスは盛大にため息をつき、
「……リリ、ダメだから」
即刻ダメ出しをする。
「でも、向こうは正式に魔術師として呼び出してるんでしょ? 私のこと」
見透かしたように翡翠色の瞳がそう問う。
「行かせられない。大丈夫、断れるから」
難色を示すルイスと眉間に皺を寄せているテオドールの視線を浴びながら、リーリエは笑う。
「やられっぱなしって、嫌じゃない? と、言うわけだから、私リベンジマッチを挑もうと思うの」
リーリエはルイスの前に手を出して、
「そんなわけなので、ルゥが差し止めてるレオンハルト様からのラブレター、いい加減渡してくださるかしら?」
ニコニコニコニコと効果音がつきそうなほど完璧な笑顔で、リーリエはルイスに迫る。
「俺、今日はリリの説明聞きに来ただけなんだけど」
「じゃ、説明聞いた後で頂戴。どうせ手元に持っているのでしょう?」
お互いのやり口など嫌というほど分かり合っているのだから、誤魔化しなど効くわけもない。厄介で賢い義妹を前に、ルイスは深い深いため息をついて、
「とりあえず、話聞いてからな」
と、とても嫌そうにそう言った。
この物語が結末を迎えたとき、ストーリーのその先空白の中で自分は何を手にするのだろう? と、リーリエは自身の指先を見つめた。
「リィ、ルイスが来たが」
テオドールの声かけに顔を上げたリーリエは、
『リィ様の描く未来が、幸せなものでありますように』
そう言って帰って行ったラナの耳打ちを思い出し、赤面しそうになる。
『面倒臭くて拗らせてるリィ様に付き合ってくださる方など、テオドール殿下以外いないと思いますので、連れ戻される前に既成事実を作っておく事をお勧めします』
テオドールと何を話したのかは知らないが、テオドールの事を気に入ったらしいラナの余計な助言のせいで、青と金の目と合うだけで激しく逃げたい衝動に駆られる。
「どうした、リィ? 顔が赤いが」
「なんでもないです、すみません」
口元を覆って目を逸らすリーリエに訝しげな視線を送ってくるテオドール。
そんな彼の視線を感じ、居た堪れないリーリエは、
『……既成事実って。もうっ!』
意識するなというほうが無理だ。本当に余計な置き土産をとラナのことを恨めしく思った。
☆
複雑そうな表情を浮かべ、応接室で待っていたルイスに、リーリエは淑女らしくカテーシーをして見せる。
「アルカナ王国全権代理者、ルイス王太子にカナン王国が魔術師リーリエ・アシュレイがご挨拶申し上げます」
魔術師の正装はしていないが、親しい友人としてではなく、魔術師として名乗るリーリエにルイスは盛大にため息をつき、
「……リリ、ダメだから」
即刻ダメ出しをする。
「でも、向こうは正式に魔術師として呼び出してるんでしょ? 私のこと」
見透かしたように翡翠色の瞳がそう問う。
「行かせられない。大丈夫、断れるから」
難色を示すルイスと眉間に皺を寄せているテオドールの視線を浴びながら、リーリエは笑う。
「やられっぱなしって、嫌じゃない? と、言うわけだから、私リベンジマッチを挑もうと思うの」
リーリエはルイスの前に手を出して、
「そんなわけなので、ルゥが差し止めてるレオンハルト様からのラブレター、いい加減渡してくださるかしら?」
ニコニコニコニコと効果音がつきそうなほど完璧な笑顔で、リーリエはルイスに迫る。
「俺、今日はリリの説明聞きに来ただけなんだけど」
「じゃ、説明聞いた後で頂戴。どうせ手元に持っているのでしょう?」
お互いのやり口など嫌というほど分かり合っているのだから、誤魔化しなど効くわけもない。厄介で賢い義妹を前に、ルイスは深い深いため息をついて、
「とりあえず、話聞いてからな」
と、とても嫌そうにそう言った。