生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
夕方の市場の活気はかなりあって、買い物客で溢れていた。冷やかすように露店を覗いて行けば、様々な商品がところ狭しと並んでいる。
「あっ」
リーリエは穀物や香辛料などが並ぶ店の前で足を止める。
「いらっしゃい、何にします?」
人好きする笑顔で店主が尋ねてくる。
「ごめんなさい、見ていただけなの。随分、価格が安くなったなって」
「そうですね、お姫様が嫁がれて以降カナンから安定して輸入ができるようになりましたからね。今年の冬は安泰ですよ」
「そっか、じゃあ今年は飢えなくてすみそうね」
リーリエは嬉しそうに笑う。市場が安定してきていることを知ったその横顔はどこか誇らし気で、安堵の色を示していた。
「魔獣被害もここ数年随分落ち着いて来ているから、本当ありがたいわ」
隣の店の売子の女性も話にまざってくる。
「死神王子だっけ、あの方が辺境から帰って来られてからね。暮らし向きが随分変わったのよ」
渡来品を扱う店なのだろう。食物だけでなく、雑貨など商品が随分充実していた。
「そうそう。陸路が魔獣に襲われることがなくなって、随分商売がしやすい」
うんうんと頷き合うふたりを見て、
「そっか。騎士団の皆さまに感謝ですね」
ねっと隣にいるテオドールを見上げてくるリーリエは、自分の事のように嬉しそうで。
「やっぱり、平和が一番よねぇ」
しみじみそういうリーリエの髪をテオドールは撫でて笑った。
「と、言うわけで彼氏さん、デートの記念に彼女さんにコチラの指輪なんていかがです?」
勧められたのは中央に色ガラスや色鮮やかなドライフラワーなどが閉じ込めらた、綺麗でシンプルな指輪だった。
「わぁ、色んな色があるのね。初めて見たわ」
普段一級品の宝飾しか身につけない公爵令嬢が持つにはあまりに安くて、子どものおもちゃのような指輪だったが、可愛いなと見ているリーリエがとても可愛く見えたので、
「……欲しいなら買ってやろうか?」
とテオドールが声をかける。
んーっとしばし思案したリーリエは、
「じゃあ、せっかくなので。拘束プレイでもしましょうか?」
ふふっと楽しげにテオドールに囁く。訝しげに眉を顰めるテオドールを無視して、リーリエは指輪を端から端まで見ていく。
「テオはどれが欲しい? テオの分は私が買うね」
とリーリエは楽しそうにそう言った。
テオドールは指輪などつけないのだが、早く選んでと楽しそうなリーリエに流されて、指輪を眺める。
テオドールの目を惹いたのは、緑色のガラスをベースにかすみ草が封じられ蜂蜜色のラインが描かれたデザインだった。
「じゃ、コレ。リィっぽい」
「私っぽいって、選んで欲しいのはテオの分だってば」
「? だから、俺の分だろ?」
テオドールがその指輪を選んだ理由に、固まり耳まで赤くなるリーリエ。
本人が意図していないイケメンの突然のデレは本当に心臓に悪いと思いつつ、嬉しくもあり言葉にできない。
「うわぁ、彼氏さん彼女の事すごく大好きなんですね」
羨ましいとテオドールの色香に当てられ、つられるように顔を赤くした売子の女性がにこやかに笑ってそう言う。
「そうだな、世界で一番いい女だと思っている」
穏やかに微笑みながら低く優しく響くその声がリーリエの耳朶に届き、リーリエは精神的に戦闘不能状態になる。
サクッと自分の分を選んで代金を支払ったリーリエは、
「この方、彼氏じゃなくて、旦那さまなのでっ」
そう言ってテオドールの手を引きその場から退散した。
「あっ」
リーリエは穀物や香辛料などが並ぶ店の前で足を止める。
「いらっしゃい、何にします?」
人好きする笑顔で店主が尋ねてくる。
「ごめんなさい、見ていただけなの。随分、価格が安くなったなって」
「そうですね、お姫様が嫁がれて以降カナンから安定して輸入ができるようになりましたからね。今年の冬は安泰ですよ」
「そっか、じゃあ今年は飢えなくてすみそうね」
リーリエは嬉しそうに笑う。市場が安定してきていることを知ったその横顔はどこか誇らし気で、安堵の色を示していた。
「魔獣被害もここ数年随分落ち着いて来ているから、本当ありがたいわ」
隣の店の売子の女性も話にまざってくる。
「死神王子だっけ、あの方が辺境から帰って来られてからね。暮らし向きが随分変わったのよ」
渡来品を扱う店なのだろう。食物だけでなく、雑貨など商品が随分充実していた。
「そうそう。陸路が魔獣に襲われることがなくなって、随分商売がしやすい」
うんうんと頷き合うふたりを見て、
「そっか。騎士団の皆さまに感謝ですね」
ねっと隣にいるテオドールを見上げてくるリーリエは、自分の事のように嬉しそうで。
「やっぱり、平和が一番よねぇ」
しみじみそういうリーリエの髪をテオドールは撫でて笑った。
「と、言うわけで彼氏さん、デートの記念に彼女さんにコチラの指輪なんていかがです?」
勧められたのは中央に色ガラスや色鮮やかなドライフラワーなどが閉じ込めらた、綺麗でシンプルな指輪だった。
「わぁ、色んな色があるのね。初めて見たわ」
普段一級品の宝飾しか身につけない公爵令嬢が持つにはあまりに安くて、子どものおもちゃのような指輪だったが、可愛いなと見ているリーリエがとても可愛く見えたので、
「……欲しいなら買ってやろうか?」
とテオドールが声をかける。
んーっとしばし思案したリーリエは、
「じゃあ、せっかくなので。拘束プレイでもしましょうか?」
ふふっと楽しげにテオドールに囁く。訝しげに眉を顰めるテオドールを無視して、リーリエは指輪を端から端まで見ていく。
「テオはどれが欲しい? テオの分は私が買うね」
とリーリエは楽しそうにそう言った。
テオドールは指輪などつけないのだが、早く選んでと楽しそうなリーリエに流されて、指輪を眺める。
テオドールの目を惹いたのは、緑色のガラスをベースにかすみ草が封じられ蜂蜜色のラインが描かれたデザインだった。
「じゃ、コレ。リィっぽい」
「私っぽいって、選んで欲しいのはテオの分だってば」
「? だから、俺の分だろ?」
テオドールがその指輪を選んだ理由に、固まり耳まで赤くなるリーリエ。
本人が意図していないイケメンの突然のデレは本当に心臓に悪いと思いつつ、嬉しくもあり言葉にできない。
「うわぁ、彼氏さん彼女の事すごく大好きなんですね」
羨ましいとテオドールの色香に当てられ、つられるように顔を赤くした売子の女性がにこやかに笑ってそう言う。
「そうだな、世界で一番いい女だと思っている」
穏やかに微笑みながら低く優しく響くその声がリーリエの耳朶に届き、リーリエは精神的に戦闘不能状態になる。
サクッと自分の分を選んで代金を支払ったリーリエは、
「この方、彼氏じゃなくて、旦那さまなのでっ」
そう言ってテオドールの手を引きその場から退散した。