生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
資料に目を通しているヴィオレッタにリーリエは話しかける。
「私とフィリクス殿下の婚約は避けようのない決定事項でした」
フィリクスとの婚約は当時8歳のリーリエにはどうにもできない出来事だった。
まだスキルレベルが低いリーリエと自分のスキルを使いこなせていないフィリクスとの初対面はどうしようもないくらい最悪だった。
フィリクスはさぞ驚いただろう。決定事項として紹介された4つ下の婚約者のスキルが"暗殺者"だったのだから。
「殿下と婚約させられた日、私はひとつ約束をしました」
"私があなたを愛する日は一生来ませんが、あなたが最愛の人を見つけられたなら、その時は愛のある結婚生活をプロデュースいたします"
それは契約書すら存在しない口約束ではあったけれど、言葉の真偽が鑑定できたフィリクスは一も二もなくリーリエの提案を飲んだ。
「駆け引きが上手いわけでもないのに、私を当て馬にしてヴィ様の気を引こうなどと余計なことをするから話が拗れるのです。そこの資料に示してあるようにアレはヴィ様にぞっこんですよ」
身に覚えのある出来事やデートコースに併せて綴られたフィリクスの主観が入りまくったヴィオレッタ攻略計画は恥ずかしくなるような内容も多く、ヴィオレッタは顔を赤らめる。
それでも一緒に過ごしたその時間、ヴィオレッタが一方的に思いを重ねていたわけではなかったのだと知り、純粋に嬉しかった。
「今回、国宝勝手に持ち出して紛失させてますから、殿下の廃嫡は確実です。この後の行き先は王妃様のご生家であるフローレンス公爵家で、継承順からいってもいずれは公爵位を継ぐことになりますね。なので、彼を支える優秀なパートナーが必要なのです」
そう言って差し出された、フィリクスとヴィオレッタの政略結婚の計画書は文句のつけようがないほど隙がなく、リーリエの手を取ればフィリクスと共にいる未来が得られることが理解できた。
「どうして、私にこれを示すのです? そして、あなたは対価に何を望むのですか?」
だが、契約とは一方だけに甘いものではない。
特に今回大賢者との契約に懲りたヴィオレッタは慎重に事の真偽を確かめる。
「やはり、あなたが適任ですね。もちろん、私に利があるから持ちかけているのです」
そんなヴィオレッタにリーリエは満足気に頷く。
「ノワール侯爵家とレオンハルト様、私にお預け頂けませんか? 悪いようにはいたしませんので」
リーリエの要求にヴィオレッタは大きく目を開く。
「レオンハルト様の魔力はかなり高い。魔術師になる必要はありませんが、コントロールできるよう教育は必要かと。王位継承権の剥奪となればいずれ彼がノワール侯爵家を継ぐのでしょう? なら、今のうちに環境を整えた方が賢明かと」
リーリエはそう言って計画書の草案をヴィオレッタに渡す。
「私とフィリクス殿下の婚約は避けようのない決定事項でした」
フィリクスとの婚約は当時8歳のリーリエにはどうにもできない出来事だった。
まだスキルレベルが低いリーリエと自分のスキルを使いこなせていないフィリクスとの初対面はどうしようもないくらい最悪だった。
フィリクスはさぞ驚いただろう。決定事項として紹介された4つ下の婚約者のスキルが"暗殺者"だったのだから。
「殿下と婚約させられた日、私はひとつ約束をしました」
"私があなたを愛する日は一生来ませんが、あなたが最愛の人を見つけられたなら、その時は愛のある結婚生活をプロデュースいたします"
それは契約書すら存在しない口約束ではあったけれど、言葉の真偽が鑑定できたフィリクスは一も二もなくリーリエの提案を飲んだ。
「駆け引きが上手いわけでもないのに、私を当て馬にしてヴィ様の気を引こうなどと余計なことをするから話が拗れるのです。そこの資料に示してあるようにアレはヴィ様にぞっこんですよ」
身に覚えのある出来事やデートコースに併せて綴られたフィリクスの主観が入りまくったヴィオレッタ攻略計画は恥ずかしくなるような内容も多く、ヴィオレッタは顔を赤らめる。
それでも一緒に過ごしたその時間、ヴィオレッタが一方的に思いを重ねていたわけではなかったのだと知り、純粋に嬉しかった。
「今回、国宝勝手に持ち出して紛失させてますから、殿下の廃嫡は確実です。この後の行き先は王妃様のご生家であるフローレンス公爵家で、継承順からいってもいずれは公爵位を継ぐことになりますね。なので、彼を支える優秀なパートナーが必要なのです」
そう言って差し出された、フィリクスとヴィオレッタの政略結婚の計画書は文句のつけようがないほど隙がなく、リーリエの手を取ればフィリクスと共にいる未来が得られることが理解できた。
「どうして、私にこれを示すのです? そして、あなたは対価に何を望むのですか?」
だが、契約とは一方だけに甘いものではない。
特に今回大賢者との契約に懲りたヴィオレッタは慎重に事の真偽を確かめる。
「やはり、あなたが適任ですね。もちろん、私に利があるから持ちかけているのです」
そんなヴィオレッタにリーリエは満足気に頷く。
「ノワール侯爵家とレオンハルト様、私にお預け頂けませんか? 悪いようにはいたしませんので」
リーリエの要求にヴィオレッタは大きく目を開く。
「レオンハルト様の魔力はかなり高い。魔術師になる必要はありませんが、コントロールできるよう教育は必要かと。王位継承権の剥奪となればいずれ彼がノワール侯爵家を継ぐのでしょう? なら、今のうちに環境を整えた方が賢明かと」
リーリエはそう言って計画書の草案をヴィオレッタに渡す。