生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
「旦那さま、私の話ちゃんと聞いてましたか?」
そう言ってテオドールに視線を向けたリーリエはやや呆れたようにため息をついた。
「私は、自分で、旦那さまとの結婚を選んだんです。旦那さま見てるだけで幸せなんだって夕食時も申し上げたでしょ? 自国での婚約なんて形だけ。フィリクス殿下は私にまるで興味がなかったので、今頃運命の儚い美少女とよろしくやってるんじゃないでしょうかね。私の事をでっち上げた冤罪で断罪して追放しようとしてましたし、周りが足場固めてるのにも関わらず根回しもせずに一方的に婚約破棄しようとするし」
その時のことを思い出して顔をしかめ、肩を竦めるリーリエ。
「こっちは刻々と時間に追われていると言うのに、当て馬までやれと? そこまでお前にリソース割けんわ! この自意識過剰男がっ! 脳内お花畑で自己肯定感MAXかっ!! とアホらし過ぎて飛び級で学校卒業してしまいましたわ。その場にいなければ冤罪もでっち上げようがないでしょうし、断罪イベントもできませんからね」
そのために書く予定の無かった論文まで出してしまったと嫌そうに付け足す。
「これ以上陛下に目をつけられないように水面下で大人しくしていたというのに、本当にあのアホは余計な仕事ばっかり増やしてくれやがって、って感じですわ」
リーリエの目立った功績の正体が当て馬回避のためだったのかと納得するとともにリーリエらしいと腑に落ちる。
それにしても、っとテオドールは叫びきって肩で息をするリーリエを見て笑いをこらえることができずくくっと喉を鳴らす。
「淑女が聞いて呆れるな。そんな言葉遣いではリーリエの母上にマナー講座を組まれるのではないか?」
「申し訳ありません、旦那さま。割と業腹な上に溜め込んでいたので、つい言葉遣いが乱れてしまいましたわ」
こほんとわざとらしく咳をして、いたずらがばれた子供のように笑うリーリエ。
「いい。そのままで、話せ。駆け引きは得意な分野じゃないからな」
いくつもの自分を使い分けるリーリエが本性を晒し、ありのままの彼女で話しているのは、きっとリーリエなりの”誠実”と”信頼”なのだろう。
そしてそれを好ましく思っている自分にも、テオドールは気づいていた。
「ーー~~っ///……旦那さま私のこと殺しに来てるんですかっ! 顔面偏差値旦那さまが思っている以上に高いですからね!! イケメンが急に微笑まないっ!! 心臓が持たないからっ!! 色気垂れ流して、本当に襲われちゃいますからねっ!!」
翡翠色の瞳に感情を乗せて、くるくると変わるその姿は見ていて飽きない。
「リーリエが襲うのか? いい、許可しよう」
「NO! おさわり厳禁っ。ダメ、絶対。ていうか、なんて許可出してるんですかっ? からかわないでくださいませ」
両手でバッテンを作り、暗闇でもはっきり分かるほど耳まで真っ赤になりながらリーリエが絶叫する。
「夫婦なら特に問題ないのではないか?」
「そういう現実的な回答今いらないですからっ!!」
もう! っと本気で怒りながら涙目になっているリーリエを見て、テオドールはこらえきれず口元を抑えて笑う。
ああ、本当にらしくない。
だが、悪い気はしない。
人払い済みだが、盗聴防止魔法を張っておいてよかったとテオドールはそんなことを考えていた。
そう言ってテオドールに視線を向けたリーリエはやや呆れたようにため息をついた。
「私は、自分で、旦那さまとの結婚を選んだんです。旦那さま見てるだけで幸せなんだって夕食時も申し上げたでしょ? 自国での婚約なんて形だけ。フィリクス殿下は私にまるで興味がなかったので、今頃運命の儚い美少女とよろしくやってるんじゃないでしょうかね。私の事をでっち上げた冤罪で断罪して追放しようとしてましたし、周りが足場固めてるのにも関わらず根回しもせずに一方的に婚約破棄しようとするし」
その時のことを思い出して顔をしかめ、肩を竦めるリーリエ。
「こっちは刻々と時間に追われていると言うのに、当て馬までやれと? そこまでお前にリソース割けんわ! この自意識過剰男がっ! 脳内お花畑で自己肯定感MAXかっ!! とアホらし過ぎて飛び級で学校卒業してしまいましたわ。その場にいなければ冤罪もでっち上げようがないでしょうし、断罪イベントもできませんからね」
そのために書く予定の無かった論文まで出してしまったと嫌そうに付け足す。
「これ以上陛下に目をつけられないように水面下で大人しくしていたというのに、本当にあのアホは余計な仕事ばっかり増やしてくれやがって、って感じですわ」
リーリエの目立った功績の正体が当て馬回避のためだったのかと納得するとともにリーリエらしいと腑に落ちる。
それにしても、っとテオドールは叫びきって肩で息をするリーリエを見て笑いをこらえることができずくくっと喉を鳴らす。
「淑女が聞いて呆れるな。そんな言葉遣いではリーリエの母上にマナー講座を組まれるのではないか?」
「申し訳ありません、旦那さま。割と業腹な上に溜め込んでいたので、つい言葉遣いが乱れてしまいましたわ」
こほんとわざとらしく咳をして、いたずらがばれた子供のように笑うリーリエ。
「いい。そのままで、話せ。駆け引きは得意な分野じゃないからな」
いくつもの自分を使い分けるリーリエが本性を晒し、ありのままの彼女で話しているのは、きっとリーリエなりの”誠実”と”信頼”なのだろう。
そしてそれを好ましく思っている自分にも、テオドールは気づいていた。
「ーー~~っ///……旦那さま私のこと殺しに来てるんですかっ! 顔面偏差値旦那さまが思っている以上に高いですからね!! イケメンが急に微笑まないっ!! 心臓が持たないからっ!! 色気垂れ流して、本当に襲われちゃいますからねっ!!」
翡翠色の瞳に感情を乗せて、くるくると変わるその姿は見ていて飽きない。
「リーリエが襲うのか? いい、許可しよう」
「NO! おさわり厳禁っ。ダメ、絶対。ていうか、なんて許可出してるんですかっ? からかわないでくださいませ」
両手でバッテンを作り、暗闇でもはっきり分かるほど耳まで真っ赤になりながらリーリエが絶叫する。
「夫婦なら特に問題ないのではないか?」
「そういう現実的な回答今いらないですからっ!!」
もう! っと本気で怒りながら涙目になっているリーリエを見て、テオドールはこらえきれず口元を抑えて笑う。
ああ、本当にらしくない。
だが、悪い気はしない。
人払い済みだが、盗聴防止魔法を張っておいてよかったとテオドールはそんなことを考えていた。