生贄姫は隣国の死神王子と送る平穏な毎日を所望する
38.生贄姫はジャンル違いを主張する。
ストーリー自体はよくある内容のゲームだった。
主人公であるプレイヤーはゲーム冒頭で魔王に破壊され、あらゆる世界に飛び散ってしまった秘宝アレキサンドロスという女神の力を宿した魔石のカケラを回収するために、仲間と共に世界中を旅しながら世界の謎を解いて行く、謎解き冒険アクションRPGである。
ちなみにリーリエ・アシュレイは本筋に全く関係なく、ガチャにも出てこない。
「と言うわけで、ジャンル違いだと思うので、いい加減お手をお離しください。旦那さま!」
「冒頭の"と"に繋がる内容が不明なんだが、いい加減慣れたらどうだ?」
流石のリーリエも前世でやっていたゲームと駄々被りの世界観なんだと訴えるのが得策だとは思っていない。
だが、それでも声を大にして言わずにはいられない。
「アクションバトルファンタジーの世界にも恋愛要素はありますが、乙女ゲームじゃないので無理なものは無理ですっ! 過剰なスキンシップはお控えください」
隙をついてテオドールからばっと手を離したリーリエは、物理的に距離を取るため机の後ろに隠れる。
「そうやって私のことを揶揄って楽しいのですか? 旦那さまはお暇ですの? 暇を持て余し過ぎて珍獣を揶揄うことを趣味にしたんですの?」
早口でまくしたてながら威嚇してくるリーリエが懐かない猫のようで、テオドールは口元を抑えて喉で笑う。
「面白いか否かの2択なら正直リーリエの反応が一々面白いが、まぁとりあえず今日のところは何もしないから出てこい。話が進まん」
「”今日は”って何ですか、”は”って」
赤面しつつ徹底抗議の姿勢で臨むリーリエは、早口でテオドールに指摘を入れる。
「”は”だろう。過剰も何も手の甲にキスする程度夫婦なら適正な範囲内だろう。第一、そんな調子で公務の時はどうする気だ?」
ごくごく当たり前に諭されてリーリエはうぅっと唸るしかできない。
「でも、旦那さまが悪いのです」
消えそうな声で訴えるリーリエは先日の出来事を思い出して耳まで赤くする。
「旦那さまが、あんなことするからぁ。今まで意識しないようにしてたのにどうしてくれますの?」
「どう、といわれても。ここまで尾を引くとも免疫ないとも思ってなかったしな。むしろリーリエ今までよく無事だったな? カナンで公式行事の時どうしていたんだ?」
”結婚”とは、両者間の契約であり、当然夫婦間のあれやこれも含まれること自体はリーリエも理解している。
知識がないわけでもない。
だが、できるかと言われれば話は別なわけで。
「殿下と婚約していた時はパートナーのお務めはしましたが、ファーストダンス踊ったらサヨナラの関係でしたし、婚約者がいるので誰からも誘われませんし。お父様に倣って舌戦に忙しかったですし」
話ながら、自分の青春前世から真っ黒じゃないかという事実に気づいて俯くリーリエ。
「そもそも”推し”は触っちゃダメなんですよ? みんなのものなので。貢いで眺めて愛でる対象であって、そういう邪な感情は持っちゃダメなんですよ?」
100%邪な感情がないかと言われれば否だが、それでも目の前にいるのは憧れの推しなので。
「必要以上に近づいたら心臓止まりそうです。キラキラがまぶしすぎる」
出来れば一方通行の関係でいたかった。
主人公であるプレイヤーはゲーム冒頭で魔王に破壊され、あらゆる世界に飛び散ってしまった秘宝アレキサンドロスという女神の力を宿した魔石のカケラを回収するために、仲間と共に世界中を旅しながら世界の謎を解いて行く、謎解き冒険アクションRPGである。
ちなみにリーリエ・アシュレイは本筋に全く関係なく、ガチャにも出てこない。
「と言うわけで、ジャンル違いだと思うので、いい加減お手をお離しください。旦那さま!」
「冒頭の"と"に繋がる内容が不明なんだが、いい加減慣れたらどうだ?」
流石のリーリエも前世でやっていたゲームと駄々被りの世界観なんだと訴えるのが得策だとは思っていない。
だが、それでも声を大にして言わずにはいられない。
「アクションバトルファンタジーの世界にも恋愛要素はありますが、乙女ゲームじゃないので無理なものは無理ですっ! 過剰なスキンシップはお控えください」
隙をついてテオドールからばっと手を離したリーリエは、物理的に距離を取るため机の後ろに隠れる。
「そうやって私のことを揶揄って楽しいのですか? 旦那さまはお暇ですの? 暇を持て余し過ぎて珍獣を揶揄うことを趣味にしたんですの?」
早口でまくしたてながら威嚇してくるリーリエが懐かない猫のようで、テオドールは口元を抑えて喉で笑う。
「面白いか否かの2択なら正直リーリエの反応が一々面白いが、まぁとりあえず今日のところは何もしないから出てこい。話が進まん」
「”今日は”って何ですか、”は”って」
赤面しつつ徹底抗議の姿勢で臨むリーリエは、早口でテオドールに指摘を入れる。
「”は”だろう。過剰も何も手の甲にキスする程度夫婦なら適正な範囲内だろう。第一、そんな調子で公務の時はどうする気だ?」
ごくごく当たり前に諭されてリーリエはうぅっと唸るしかできない。
「でも、旦那さまが悪いのです」
消えそうな声で訴えるリーリエは先日の出来事を思い出して耳まで赤くする。
「旦那さまが、あんなことするからぁ。今まで意識しないようにしてたのにどうしてくれますの?」
「どう、といわれても。ここまで尾を引くとも免疫ないとも思ってなかったしな。むしろリーリエ今までよく無事だったな? カナンで公式行事の時どうしていたんだ?」
”結婚”とは、両者間の契約であり、当然夫婦間のあれやこれも含まれること自体はリーリエも理解している。
知識がないわけでもない。
だが、できるかと言われれば話は別なわけで。
「殿下と婚約していた時はパートナーのお務めはしましたが、ファーストダンス踊ったらサヨナラの関係でしたし、婚約者がいるので誰からも誘われませんし。お父様に倣って舌戦に忙しかったですし」
話ながら、自分の青春前世から真っ黒じゃないかという事実に気づいて俯くリーリエ。
「そもそも”推し”は触っちゃダメなんですよ? みんなのものなので。貢いで眺めて愛でる対象であって、そういう邪な感情は持っちゃダメなんですよ?」
100%邪な感情がないかと言われれば否だが、それでも目の前にいるのは憧れの推しなので。
「必要以上に近づいたら心臓止まりそうです。キラキラがまぶしすぎる」
出来れば一方通行の関係でいたかった。