例えば、XXとか。

寒空にどこへ行けばいいのか……

マンション前で立ち尽くす。

寒気を感じ、部屋へ戻ろうとした時だった。

碧斗が出てきて私の前に立った。




「 寒いだろ 」

「 そうだね…… 」



どうしてかな、碧斗が目の前にいるのに手が伸ばせないほど遠く感じる。



「 入ろ 」

「 私、ちょっと用事あるから 」

「 おい待て 」



呼び止めるにも、何かが違うと感じてしまう。

私の名前を呼ばない……

肩を、腕を、手を…… 触れない。



優雅君の言葉が頭から離れない。

碧斗の何を知らないって言うの?



「 聞いてもいい?」

「 何 」

「 私と出会う前の… 」



知らない何か、知ってはいけない何かがある?

ただ聞くだけなのに、聞けない。



「 なぁ なんかあった?」

「 ……碧斗は?」



互いに口を閉ざし、私は碧斗から離れ歩いていく。

行く宛もない私は一人きり。




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