例えば、XXとか。

しばらくして落ち着いた私は碧斗に言い過ぎたと少し反省。

そもそも高級石鹸にこだわる必要はなかったかもしれない。

自分の物を取られたり、壊されたり、勝手に使われたり、子供の頃から嫌だった。

母が生活を切り詰める中で買ってくれた物は尚更大切だった。

今は、バイトして少しは買える。

だから、碧斗には言い過ぎたかもしれない。


二時間後、碧斗が帰ってきた。

手には袋を持っている。



「 これからは同じ物使えばいい、石鹸じゃなくてもお前の肌は綺麗だし、可愛い 」



え、碧斗?

今 可愛いって言った……



「 ボディソープ、香りが良いらしくて人なんだと。店員のオススメで900円、いいだろ?」

「 900円!? そんな高いボディソープを… 勿体ない! 3個98円の石鹸でもいいくらいだよ 」

「 はぁ? お前なぁ、3000円の石鹸であんなにぶちギレしたくせに3個98円とか、わっかんねぇ 」



でしょうね、そうでしょうとも。

現実はそんなものよ。

高級石鹸を使ったから、庶民の身近にある石鹸を忘れてしまう。



「 市民の味方、お手頃価格を甘く見ないで!」

「 ほんと、変な奴だな… 伊織、お前の肌は首しか知らないけど…… 」



え、何……

ちょっと、なんで近くに……



袋をポイッと床に投げ捨てて、間合い詰め寄る碧斗に腰が引ける。



「 首、見せろ 」






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