例えば、XXとか。
私は酒癖の悪い父が嫌いだった。
酔うと母や私には耐えがたい醜態をさらしていた。
離婚してどんなに生活が穏やかになったか……
でも、父を失ったわけじゃない。
滉は失った……
探してもいなくて、呼んでも声は届かなくて……
どんなに辛く寂しく悲しかったか。
「 お年玉に車なんかくれるなよな~ ほんと、バカ息子だよな 」
「 そんなこと…… 」
そんなことない、絶対違う。
滉君はこんなに優しいんだから……
掴んでいた腕に、私は寄り添った。
離さないでいてあげたい。
何も出来ないなりに、今離さないでいる。
「 良かった来れて、ありがとね伊織ちゃん 」
「 うん 」
家族の大切さを知った気がした。
碧斗の顔が…… 見えるようだった。
「 妹さん、名前は?」
「 美紅(みく)」
妹思いの滉が、優しい兄の顔で私を見つめ微笑んでくれる。
腕を離せない、そんな優しい笑みを見たら尚更にしがみつくようにした。
美紅さん… お兄さんの滉君はすごく優しくて楽しい人だよ。