例えば、XXとか。
一人ではいられない。
今の感情を抑えるには辛すぎて……
私は優雅に電話をした。
声なく、優雅の心配する声を聞きながら……
『 伊織ちゃん、今マンション? …行くから、すぐ行くからっ 』
優雅の耳に聞こえた音が外だとわかり、帰ったばかりの所をまた急ぎ行く。
しばらく、涙を静かに流しながらガードレールにもたれて俯いていた。
どれくらい時間が過ぎたか、後ろに止まった車から優雅が……
「 伊織ちゃん… 」
私の前にしゃがみ顔を見る優雅。
涙している私を見て……
立ち上り、そっと抱きしめてくれる。
「 ……おいで 」
声なく泣く私の顔を隠すように抱きしめてくれる。
「 壁になって守るって言ったろ、もう、大丈夫だから 」
辛い……
見たくなかった。
私は優雅に隠してもらいながら泣いた。
“もう、大丈夫だから”
優雅の声を聞きながら、少しだけ安心する。
見たままの光景をどう受け止めればいいか、まだわからない。
碧斗を兄として見てたら、こんなに苦しくなかったはず……
でも、碧斗への気持ちが止まらない。
マンションでは、伊織を追った碧斗に向けて微笑む亜稀がいた。