例えば、XXとか。

母にキュッと抱きつき伝えた。



“おめでとう” と。



たった四人だけで行われる式。

私と碧斗は最前列ではなく、少し離れた所に座り、父と母を見つめていた。



「 碧斗、これからもよろしくね 」

「 なんだよ急に 」

「 教会のせいかな 」



神様、誓います。

私は碧斗への気持ちはずっとかわらないと……

誓います。


お母さん、幸せになってね。



祭壇前。


父と母の誓いが始まる。



「 辰己さん、私の気持ちは変わりません。
だって伊織が言ってくれたの、おめでとうって。
もう、それだけで……
私はあなたとどちらかが死を迎えるまで側にいると誓います。だから…… 」


「 わかってるよ、三花さん。碧斗の卒業まではって約束していたけど… それではダメになったようなんだ。
二人が思い合ってるのがわかったからね 」


「 でも、伊織はまだ知らないわよ、私達が入籍してないって事 」


「 碧斗が卒業するのを待って話そうと思う。
若い二人だし大丈夫だ 」


「 伊織は知らぬが仏ね。娘のドレス姿を見た時…… 隣にいた碧斗君と互いに見る目でわかったの、あんな幸せそうに笑って、恥じらう姿も、嬉しくて感動したわ 」


「 じゃあ、いいんだね? 籍は入れなくて… 」

「 あの子達に譲るわ 」

「 末長く、よろしく三花さん 」

「 はい、こちらこそ 」



父と母の会話。

それは式の前日の夜の話。



何も知らない私、ただ親が子を思う。

とても温かな思いやりだった。







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