例えば、XXとか。
当然怒る碧斗に、父は首を縦には振らなかった。
「 新しい家もある、でも家族になったんだから二人で暮らすのに問題はないだろ?
碧斗と家族として仲良くしてほしいんだ、伊織ちゃん 」
こう言われては……
「 はい、わかりました 」
「 おいっ!」
だって、仕方ないじゃない。
お母さんまで困らせるわけにはいかないよ……
私が折れたらいいわけだし、収まらないし、二人暮らしまでやめろとか言い出しそうだもん。
碧斗が納得しないまま、父と母は新婚さん気分で私たちのアパートを勝手に決めてきた。
不便のないようにと、3LDKのマンション。
碧斗の父は建築家で事務所を構えている上、大家さんと知り合いらしくあっさり決まった。
今まで母と二人、ギリギリの生活だったのが一変し、何とも私には贅沢な暮らしに感じた。
新居で片さないままの荷物をそのままマンションに、私がバイトでいない間に引っ越しが終わっていた。
そして今、碧斗と揉めている。
「 お前が自分で言ったんだろ、自炊するって。だったら食費だの言うな!勝手に好きにやれ!」
「 なっ… 」
「 いいか、住んでるだけで仲良しこよしなんかしない! 」
私の一目惚れは泡と消えた。
見た目では人はわからないとわかった。
この日から、私にとって碧斗は嫌いな奴になった。