例えば、XXとか。

当然怒る碧斗に、父は首を縦には振らなかった。



「 新しい家もある、でも家族になったんだから二人で暮らすのに問題はないだろ?
碧斗と家族として仲良くしてほしいんだ、伊織ちゃん 」



こう言われては……



「 はい、わかりました 」

「 おいっ!」



だって、仕方ないじゃない。

お母さんまで困らせるわけにはいかないよ……

私が折れたらいいわけだし、収まらないし、二人暮らしまでやめろとか言い出しそうだもん。



碧斗が納得しないまま、父と母は新婚さん気分で私たちのアパートを勝手に決めてきた。

不便のないようにと、3LDKのマンション。

碧斗の父は建築家で事務所を構えている上、大家さんと知り合いらしくあっさり決まった。

今まで母と二人、ギリギリの生活だったのが一変し、何とも私には贅沢な暮らしに感じた。

新居で片さないままの荷物をそのままマンションに、私がバイトでいない間に引っ越しが終わっていた。



そして今、碧斗と揉めている。



「 お前が自分で言ったんだろ、自炊するって。だったら食費だの言うな!勝手に好きにやれ!」

「 なっ… 」

「 いいか、住んでるだけで仲良しこよしなんかしない! 」




私の一目惚れは泡と消えた。

見た目では人はわからないとわかった。

この日から、私にとって碧斗は嫌いな奴になった。



< 6 / 282 >

この作品をシェア

pagetop