例えば、XXとか。
碧斗はいなかった。
本当に一人で暮らしているような、錯覚が。
でも碧斗はいる。
互いに空気だと、まるで幽霊みたい。
バイトへ行く準備をしながら、体の中でチクリと微かな痛みのようなものを感じた。
「 行ってきます…… 」
返事なんて、あるわけがない。
私は私で暮らせばいい、それだけの事。
バイト先のドラッグストアーは新しい父の配慮もあり、以前住んでいたアパートからよりは近くなった。
そして、バイトは友達の菜月も一緒だ。
「 あれ、菜月 今日出勤だった?」
「 ううん、パートさんが急用で休みになったから私が代わりにね 」
「 そっか~ 菜月、今日は私の癒しになってね 」
「 は? 癒しにならないでしょ~ 」
「 なるなる、朝から疲れてたから 」
碧斗より、菜月が癒し。
仕事して話していれば気も休まる。
菜月と利香には話してある、母の再婚の話。
そして兄が出来ると……
その兄は一目惚れした相手だった事も。
今は、碧斗が嫌いだ。
あ… また、チクッてした……