クリスマスは赤い誘惑
でも、今日は引き下がらないんだから。

そう決意して佐野くんが座ったベッドに近付いてその上に乗る。

「ねぇ…」
「何?」

そう返すも視線は画面のまま。少し腹が立って四つん這いで彼に近付くと手にしていたスマホを奪って自分から口づけた。

「…返して」
「だめ……ン」

言葉でそう言いながら口づけには応える佐野くんはまた私を試して楽しんでいる。佐野くんの膝に乗り上げて向かい合う姿勢で何度もキスを繰り返す。

はしたない、と思うだろうか。
でも私をそうさせるのは間違いなく佐野くんなのだ。

添えるようにだけ頬に触れていた手を首に回す。

足りないと訴えるように。
それでも、佐野くんの手は私の身体に触れてこない。

「ねえ、どうして……?」

これ以上焦らされるなんて耐えられない。口づけだけで体温は上がり、それも佐野くんはよく知っているはずなのに。

「何が?」
「……分かってるくせに」
「今日はうんと優しくしたつもりだけど、まだ足りない?」

膝に座っているせいで普段見上げる佐野くんが下から試すような目付きで私を見つめる。

「足りない……」
「何が足りない?ちゃんと口で言わないと分からないだろ」

嘘つき。

だけど、その視線に身体がもっと熱くなる。
言わされることに悦びを感じるなんて、誰にも知られたくない。

「佐野くんが、欲しい……」
「そう。欲しいなら、それなりのおねだりの仕方があるよな」

冷たい瞳に熱が灯る。
背筋をぞくぞくとした震えが駆け上った。
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