浅葱色の魁
徳川家茂が将軍に就任



兄から文が届いた


兄弟が、養子出され


バラバラになったと


良いところの養子になったから
心配するなと付け加えてあった



〝俺が…逃げたから…〟



平助は、自分の生まれを責めた




そして、町で喧嘩をすることが増えた




次第に、人から避けられるようになった





「平助君!ここにいたのか!
頼みがあって、探してたんだよ!」




久しぶりに山南が声を掛けてきた




「実はね!正式に試衛館へ移ろうと思っていてね!」



山南を無視して、素振りを続けていると



「一緒に移ってくれないか?
近藤さんは、あ、この前の若先生なんだけど、平助君も一緒にって言うんだ!
僕もそれがいいと思ってね!」



木刀を下ろし、山南に向かった




「勝手に俺を巻き込むなよ」



土方と再会してから、天然理心流に
興味がないわけではなかった

土方を目標にしていたほどだから



「だったら、君はどうしたいんだい?」



グサリその言葉が突き刺さった



〝藤堂家に帰りたい〟

〝兄弟で力を合わせて生きたい〟

〝徳川と縁を切りたい〟

〝逃げたくない〟

〝強くなりたい〟

〝男になりたい〟






全て、叶えられないことだとわかっている

拳をギュッと握る


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