浅葱色の魁
広くなった屯所

同じく広くなった庭を歩く





なるべく人の来なさそうなところで
ストンと腰を下ろした




〝新選組にいるためには、男でいないと
伊東さんの機嫌さえとっていれば
上手くいく… 生きなくちゃ…〟




そっと、唇を指でなぞる





「無理…」





心と口から出る言葉がちぐはぐになる





〝我慢すればいい
死ぬのはもったいない〟




「触られたくない…もう、いやだ…」





夕餉の時間までそこで過ごし
自室に戻る




「平助!飯だぞ!」


「ごめん いらない
俺の分も食べていいよ」



ガラッと襖が開けられる



「具合悪いのか?」


「ううん 疲れたから寝る」


「……あとで陽乃に握り飯運ばせるよ」


「いい 寝たいから」





永倉が平助の顔を見ようと
布団に手を掛けたが、ポンポンと
布団を優しく叩いた





食堂へ行くと
皆が不思議がる


「平助呼びにいったんじゃなかったか?」


「あー、旅の疲れかな
寝たいんだと」


「では、夜食を用意します」


「いや、夜食もいいってよ」



皆が食事をする間





シュタッ





「烝、勝手に来るな…寝てるのに……」


「起きてるやん!
疲れてるからって、食欲ないやなんて
珍しいさかい、心配になってん!」


「寝たいだけ……」


「腹減ったり、具合悪くなったら
遠慮なし言いや!」


「うん… おやすみ」









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