浅葱色の魁
平助がいつもの日課をこなし
よく晴れた空を廊下から見上げて

ぼぉーっとしていると



「少し、よろしいですか?」



康正について、客間へ




そこに、母 志賀が座していた




「今日は、お二人でお話下さい」


「必要ないよ」



康正を引き留め



入口に立ったまま、平助が喋り始めた



「私があなたの子かどうかは、もはや問題ではない…家定様に似たこの顔さえあれば
徳川の役にたてるそうです
慶喜様か天子様の子を産みます
産んだ子は、私がこの手で育てます
私は、捨てたりしない
子にどのような運命があろうとも
それに耐えうる強さを教えます
あなたとは、二度と会うことは、ない
私は、あなたの子ではないから」




表情を変えない志賀を見つめ




くるりと背を向ける





「いつか、本当の母に会ったら…
『産んでくれてありがとう』と
言いたかった」





スパンッと襖を閉め、自室へ向かう







残された康正が志賀を気遣う



「最後の言葉が本心なのですよ
素直に言えば良いのに…」



「あの子は、私の子ではないのよ」



「はあ… なるほど…
お顔は、家定様に似て
意地っぱりは、志賀様に似たのですか」




康正が苦笑いする












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