浅葱色の魁
笠で顔を隠し、町を歩く



「会わせたい人がいてね
急だとは思ったが、今夜しか
都合がつかなくてね」




康正が旅籠に入る


警戒しつつ、その後に続く


「俺だ」

「どうぞ」


康正が襖を開けると
中にいた男が、平助を見て
目を見開いた

一瞬、呆けたがすぐに


ガバッ



「お待ちしておりました!
手前、朝比奈昌弘と申します!!」



康正に促され、部屋に入る


朝比奈の前に座ると


「頭を上げて下さい」


朝比奈が頭を上げると


ガバッ


平助が頭を深く下げ


「新選組 組長 藤堂平助と申します!」


「うえええ!!お辞め下さい!!!
そんな!!そんな!!」


「はっはっはっはっはっ!
朝比奈 君の負けだよ!」


「負け…って…」


「ほら、家定様もしてただろ?」


「はあ… では、このように生き写しで
いらっしゃるのに…
お認めになっておらぬと?」


「クククッ そうなのだ」


「御立派になられて…」


涙ぐむ朝比奈に康正が呆れる



「松平様 朝比奈様 帰っていいですか?」



「藤堂君…いや、平助様
今宵 新選組を抜け、朝比奈と共に
長崎へお逃げ頂きたく存じます」


「平助様!お父上、家定様は
平助様が生まれる前に
とても平助様の事を案じておりました
春嶽は、徳川の血を絶やさぬことに
とても執着しておりましたから
無事に逃げ、平穏に暮らしているのかと
このように御立派な姿を家定様にお見せ出来ないことが悔やまれます…」


「そんなに似てますか?」


2人が頷く



「でも、人違いだから…」


「人違いでも構いません
どうか、お逃げ下さい!」



< 86 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop