ミエナイモノ
すると、風がむくっと起き上がった。
まだ30分ぐらいしか経っていない。
「あれ、風もう起きたの?まだ寝てていいよ?」
「モウ充分寝タカラ大丈夫…」
風の声ではなかった。
あの、お母さんの時のような、低くゆっくりな声だった。
ヤツが現れたのだ。
しかも、風に乗り移って。
「優人、水!」
私はとっさに叫んだ。
「わかった!」
優人が、ぱっと水をつかむ。
しかし、その時には既に“ヤツ”は私達の武器であるナイフを握っていた。