執着系上司の初恋
不意打ち 後半
「美男、美女が並ぶと迫力あるねー。」
気安く話す鈴木部長は、俺が2課に来た時からお世話になっている。会社同士の付き合いが長くいい関係が続いて来たからこそ、佐藤係長の怠慢さは俺としても許せなかった。担当者である井上さんからのメールに一週間以上返信せず、電話をしてやっと対応するといった体たらく。勿論、佐藤本人は、大した謝罪もしないから、井上さんが腹をたてるのも最もだった。そんな事態に俺が気付く事ができたのは、この鈴木部長からのこちらを心配した電話があったから。
普通、取引会社の怠慢な態度に怒りはしても、心配してくれる取引先など稀有だ。もし、鈴木部長じゃなかったら、長く続いてきた取引が消え、会社に莫大な損害を与えたに違いない。感謝してもしきれない恩を感じている。
と、感謝の念に囚われていたら、担当者の井上さんがいつもながらの嫌味を加藤に言った。
「そりゃ、こんなイケメンといたら、女子は楽しいよね」
自分の表情が固まるのを感じた。
いつもなら、井上さんの嫌味など流すのに、この時の俺は、カッと頭に血が上ってしまった。
加藤は、違う。
そう言いたかった。しかし、先手を打ったのは、その加藤だった。
俺が見たことのない笑顔を、嫌味な井上に向けて、
俺の容姿に見惚れるのは分かるが、俺の仕事についていくのに必死だから、俺に見惚れる暇がないと言った。
俺は彼女が言ったことを頭が理解したと同時に、彼女から顔を背けた。
じわじわと顔が赤くなるのを止める事が出来なかったから。
いくら表情を取り繕うことが出来ても、顔色までは変えられない。
彼女は本気で言ってるわけじゃないと、自分に言い聞かせるのに、仕事を覚えようと頑張る真面目な彼女からの賛辞に、嬉しさと恥ずかしさと、彼女の笑顔が井上さんに向けられていた事への何とも言えない気持ちが入り乱れ、また、言葉を詰まらせる。
ああ、今日の俺は何なんだ。
いつだって、自分の容姿を最大限に利用して、容姿への賛辞など聞き慣れているのに。
俺が言葉を詰まらせていると、鈴木部長が爆笑していた。
これは、俺の顔色を見て笑ってる。
絶対、後でからかわれる。。最悪。
しかし予想に反して、加藤への賛辞と俺にいい経験になると、優しい笑みを浮かべていた。
商談が終わり、加藤とは現地解散し、俺は先ほどの鈴木部長の言葉を考える。
いい経験とは、女性部下を育てる事だろうか。
確かにいつまでもこのご時世、女子を2課に入れないというのは無理だろう。
頭では分かってはいる。でも、今までの経験がそれを良しと出来ない。
皆が加藤の様なら、、
そう思ったところで、俺は短期間の間に随分と加藤に肩入れしていると気がついた。
彼女の仕事ぶりを思い出す。
俺に話かける時は、今こちらに時間があるかを確認し、メモを片手に要点をまとめてから質問する。
与えられた仕事を迅速にこなし、自分の判断で必要と思われる資料を読み解く。
若手の宮本にも、後輩の山城にも、佐々木女史に至っても、誰に対しても礼儀を通している。
、、、やっぱり、彼女は、評価できる人間だと思う。
俺ももっと頑張らないといけないな。
気安く話す鈴木部長は、俺が2課に来た時からお世話になっている。会社同士の付き合いが長くいい関係が続いて来たからこそ、佐藤係長の怠慢さは俺としても許せなかった。担当者である井上さんからのメールに一週間以上返信せず、電話をしてやっと対応するといった体たらく。勿論、佐藤本人は、大した謝罪もしないから、井上さんが腹をたてるのも最もだった。そんな事態に俺が気付く事ができたのは、この鈴木部長からのこちらを心配した電話があったから。
普通、取引会社の怠慢な態度に怒りはしても、心配してくれる取引先など稀有だ。もし、鈴木部長じゃなかったら、長く続いてきた取引が消え、会社に莫大な損害を与えたに違いない。感謝してもしきれない恩を感じている。
と、感謝の念に囚われていたら、担当者の井上さんがいつもながらの嫌味を加藤に言った。
「そりゃ、こんなイケメンといたら、女子は楽しいよね」
自分の表情が固まるのを感じた。
いつもなら、井上さんの嫌味など流すのに、この時の俺は、カッと頭に血が上ってしまった。
加藤は、違う。
そう言いたかった。しかし、先手を打ったのは、その加藤だった。
俺が見たことのない笑顔を、嫌味な井上に向けて、
俺の容姿に見惚れるのは分かるが、俺の仕事についていくのに必死だから、俺に見惚れる暇がないと言った。
俺は彼女が言ったことを頭が理解したと同時に、彼女から顔を背けた。
じわじわと顔が赤くなるのを止める事が出来なかったから。
いくら表情を取り繕うことが出来ても、顔色までは変えられない。
彼女は本気で言ってるわけじゃないと、自分に言い聞かせるのに、仕事を覚えようと頑張る真面目な彼女からの賛辞に、嬉しさと恥ずかしさと、彼女の笑顔が井上さんに向けられていた事への何とも言えない気持ちが入り乱れ、また、言葉を詰まらせる。
ああ、今日の俺は何なんだ。
いつだって、自分の容姿を最大限に利用して、容姿への賛辞など聞き慣れているのに。
俺が言葉を詰まらせていると、鈴木部長が爆笑していた。
これは、俺の顔色を見て笑ってる。
絶対、後でからかわれる。。最悪。
しかし予想に反して、加藤への賛辞と俺にいい経験になると、優しい笑みを浮かべていた。
商談が終わり、加藤とは現地解散し、俺は先ほどの鈴木部長の言葉を考える。
いい経験とは、女性部下を育てる事だろうか。
確かにいつまでもこのご時世、女子を2課に入れないというのは無理だろう。
頭では分かってはいる。でも、今までの経験がそれを良しと出来ない。
皆が加藤の様なら、、
そう思ったところで、俺は短期間の間に随分と加藤に肩入れしていると気がついた。
彼女の仕事ぶりを思い出す。
俺に話かける時は、今こちらに時間があるかを確認し、メモを片手に要点をまとめてから質問する。
与えられた仕事を迅速にこなし、自分の判断で必要と思われる資料を読み解く。
若手の宮本にも、後輩の山城にも、佐々木女史に至っても、誰に対しても礼儀を通している。
、、、やっぱり、彼女は、評価できる人間だと思う。
俺ももっと頑張らないといけないな。