執着系上司の初恋
ゴールはどこ? 前半
金曜の夜ぐらいは、お弁当でも買って帰ろうか。駅から続く大通りをぷらぷらしながら歩く。
駅から家までの帰り道は10分もかからないが、それなりにお店が並ぶ。
季節はもう12月。駅もそうだけど、街並みはクリスマス一色でなんだか楽しそう。
自分がクリスマスを楽しむかは別として、綺麗なイルミネーションや、飾り付けを見るのは楽しい。

電車に揺られる事15分、一回乗り換えはするものの、駅から徒歩圏内の部屋は中々掘り出し物件だった。
転職を機に、実家通勤から人生初の一人暮らしを始めた。
部屋を決めたのは、家賃、駅近、日当たりと築年数は30年を超えてるけどリノベーションされ、全面フローリングとキッチンとお風呂、トイレがワンルームと別で、なにより建物の隙間からスカイツリーが見えたのが決め手だった。和式トイレは残念だったけど。。
実家から会社は1時間の距離だから、一人暮らしをするなら、30分以内での通勤が可能ならいいと母に言われた。母は、一人暮らしに反対だった。きっと、スマホを見れば今週は帰ってくるのかとメールが来てるはず。29才女子に対して過保護なのには理由がある。昔は結構放任だったのにな。私のせいだ。

部屋に入り、電気をつける。冷え切った空気と、静まり返った部屋。

1人を感じるこの瞬間。

でも、これが私の欲しかった空間。


大学を卒業し、就職したのは地元の百貨店。まあ、地元がお膝元ではあるけど、全国展開してるから大手企業に就職でき母も姉も喜んだ。しっかり者の姉は、都庁で勤め、同期と結婚している。百貨店での仕事は、アルバイトのような仕事から、セールの企画、準備、テナントの方へのフォローなどめまぐるしい忙しさだったが、同期にも、先輩にも恵まれ、失敗しながらもなんとか社会人生活を送っていた。
初ボーナスが出て、浮かれ気分で欲しかった洋服や、靴を買い、社会人合コンに初めて参加した。その時出会ったのが元彼だった。

この元カレとの出会いが、私の人生を大きく変える事になった。
元彼は、体育会系商社マンで、スポーツマンらしい体格と大阪出身というボケとツッコミを絡めた話術で、社会人一年目の私はころっとお持ち帰りされた。
そう、かっこ良く見えたんだよ。3つ上の社会人は大人に見えて、月の半分は海外だから忙しいけど華ちゃん(私のこと)めっちゃ可愛いやん、大事にするわ。そう言われて、、気がつけばベッドの上。。。

カッコいい商社マンの彼が出来て、浮かれつつ仕事に没頭する日々は充実してた。
でも、流通に勤める私と海外出張の多い彼は月に何度かしかデートできなかった。それでも、会えば楽しかったしお気に入りのカフェに何度も二人で行った。彼の部屋にも何度も泊まって、彼の狭いベッドで抱き合いながら寝て、朝彼の寝顔を見るのが好きだった。
でも、たまにふと、女の影を感じた。気のせいかもしれない。。
そう思った矢先、プロポーズされた。
彼が将来のことを考えていたなんて、驚きだった。今まで、結婚の話なんてしていなかったから。

今から思えば、ここまでが私の人生のピークだったに違いない。






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