執着系上司の初恋
外見と中身
華視点
12:30 オフィスにて
「こちらの連絡が、、はい。そうですか。いえ、申し訳ありません。」
冴木課長が頭を抱えるようにして肘をつき、受話器片手に20分前ぐらいから謝罪を繰り返している。
相手は、工場の品質管理の責任者のようだ。
心配して見ていると、宮本くんが話しかけてきた。
「あの人いつもなんだよ。営業を目の敵にしててさ、何かあると鬼の首をとったように、冴木課長に電話して来るんだ。絶対、冴木課長を妬んでるだけだと僕は思うんだけどさ!」
うんざりしたようにそう言うと、宮本くんは顧客との打ち合わせのために外出した。
山城くんは出張。谷口さんは今日はシフトがお休み。佐々木さんはお昼を交代でという事で先に出ていて、室内は課長と二人になった。
静まり返ったオフィスでは課長の謝罪の声と、電話越しに聞こえる罵声が漏れ聞こえる。
自分の仕事をしつつも、なんだか気になり集中できない。
コーヒーでも入れようと思い、どうせならと課長の分も用意する。課長は、あんな見た目で甘党らしい。まあ、見た目で判断しちゃいけないけど。。
コーヒーに角砂糖を二つ。これが課長のお好みらしい。まだ、電話中の課長のデスクにコーヒーを置くと、最近よく見る甘い笑みが返ってきた。
うん、そうだよね。課長に仮面は通用しないよね。自分を納得させつつデスクに戻ると、やっと電話が終わる。
「お疲れ様です。大丈夫ですか?」
あんなに一方的に言われたら、ちょっとめげてしまいそうだ。
まあ、大丈夫だなんて言ってると佐々木さんが帰ってきた。
「二人でランチ行ってきたら?」
佐々木さんがニマニマしているのが気になったが、腹ペコなので遠慮なく課長と近くのカフェにランチに出かけた。
12:45 オフィス近くのカフェ
ランチタイムのカフェは、ビジネスマンの待ち合わせや、綺麗なお姉さん達のグループで席がほぼうまっていて、トマトパスタのガーリックの匂いを嗅ぎつつ、こりゃダメかな。。と思っていると、
「カウンター席でよろしければ。。」
カフェのお姉さんが、ちょっと顔を赤らめながら課長に聞く。
うん、分かるよ。その気持ち。イケメンが爽やかに「ありがとう」なんて言ったら、ついついときめくのは乙女のお約束。
そうして、課長との距離の近さに緊張しつつ、先ほどの空腹を刺激するガーリックのトマトパスタを待っていると、
「あれ?冴木さんじゃないか?やっぱりイケメンは美女とランチなんだね。」いや、羨ましいな~っとほんとはちっともそんな事思ってなさそうなエセ爽やかな男子が一人。
一課の係長か。非常にめんどくさそうな予感。腹ペコの私に絡むのはやめろ。
しかし、なんだかペラペラ喋っている。
「冴木さんは、いいよねー。国内だと出張は短いでしょ?僕、先月は3週間もヨーロッパでさー日本食が恋しくなっちゃってー。」
じゃあ、カフェじゃなくて、定食屋さんへどーぞ。
「時差ボケしちゃってさー、なんだか眠いんだよね。」
じゃあ、ペラペラ喋ってないで、デスクで寝ろ。
心の叫びを顔に出さずにいたら、腹ペコの私はちょっとイライラしてきた。
「冴木さんは見目がいいから、ちょっと微笑むだけで契約取れちゃうでしょ?羨ましいよー。」
へラリと笑う一課の係長。
ちょっと待て。聞きづてならない言葉。相手が係長とはいえ、これは許せないよね?
私が言い返そうとしたその瞬間、
「っ!!!?」
スカートから出た私の膝小僧に冴木課長の大きな手の平が乗った。
なぜ??なぜなんだ!しかも、親指が少し膝小僧を撫でるように動いている。
ブワッと顔が赤くなり、言い出そうとした言葉を飲み込む。
「流石に、微笑むだけでは難しいですね。
そういえば、さっき品質管理の責任者が一課が新規契約した件で原材料の確保が無理そうだって言ってましたよ。お忙しいから工場からのメール、確認してないんじゃないですか?」と課長がにっこりと言うと、
「え!!本当?」
焦りを見せつつ、表面上はにこやかにエセ爽やか係長は去っていった。
課長の手の平がゆっくりと離れた。
「ごめん。セクハラだったな。気持ち悪かった?」
ちょっと困ったように冴木課長は首を傾げながら聞いてくる。
「い、いえ。気持ち悪くないですが、驚きました。」
ええ、超びっくりしました。心臓はまだ少しドキドキとしている。
「私が言い返そうとしたのを止めようとしたんですよね?」
親指の動きに必然性は感じないが、あんなのほっとけと言いたかったんだろうな。一人で撃退してたし。
「。。うん。まあね。いつもしつこく話しかけて来るんだ。俺のことを勝手にライバル認定しててね。」
なるほど。いつもあんなじゃ、いちいち取り合ってはいられないだろう。でも、イケメンだから楽してるみたいな言い分は、やっぱり納得いかないな。
「くく、だいぶ顔に気持ちが出るようになったな。あ、いや、その方が俺はいいと思ってるんだ。それに、俺のために怒ってくれようとしたんだろ?ありがとう。」
課長の嬉しそうな笑顔は心臓に悪い。しかも仮面の事をちくりと言われ、
「だって、ひどいじゃないですか。ランチだってなかなか行けないぐらい忙しいのに。それに、工場の責任者だって、さっきの係長だってひがんでるだけじゃないですか」とつい愚痴る。
「ちょっと、性格悪く思われるかもだけど、そういうのは慣れっこなんだ。俺の見た目は生まれつきだし、今までもこの見目で色々あった。いい事だってもちろんあるが、望んでない事も多い。いちいち、落ち込んでもられないし、見目が良いと注目される分、仕事ができなきゃ余計に周りをがっかりさせる。だから、周りを気にせず仕事を完璧にやりたいと思ってるんだ。」そう言う課長に、2課への左遷や、キラキラ女子の攻撃、工場責任者の罵声、エセ係長の言いがかりなどが浮かび、なんだか私が泣きそうになった。
課長、頑張ってるのにな。頑張ってると思わせない努力をきっとしてるんだ。
「。。。課長はご自分の見目が嫌いですか?」
どうしょうもない事を聞いてしまう。
「うーん。今まで言われた事ないな。。。でも、正直、そうだな煩わしいと思ってる。努力しても、見目がいいからだ、なんて言われるとやっぱり少しへこむかな。」
課長はちょっと苦笑いしながら言う。
課長が爽やかな笑顔の裏で悔しい思いをしているのが切ないぐらい伝わった。
「課長!私は課長の外見も、中身も好きですよ!」
時が止まった。
またやっちまった。。。
12:30 オフィスにて
「こちらの連絡が、、はい。そうですか。いえ、申し訳ありません。」
冴木課長が頭を抱えるようにして肘をつき、受話器片手に20分前ぐらいから謝罪を繰り返している。
相手は、工場の品質管理の責任者のようだ。
心配して見ていると、宮本くんが話しかけてきた。
「あの人いつもなんだよ。営業を目の敵にしててさ、何かあると鬼の首をとったように、冴木課長に電話して来るんだ。絶対、冴木課長を妬んでるだけだと僕は思うんだけどさ!」
うんざりしたようにそう言うと、宮本くんは顧客との打ち合わせのために外出した。
山城くんは出張。谷口さんは今日はシフトがお休み。佐々木さんはお昼を交代でという事で先に出ていて、室内は課長と二人になった。
静まり返ったオフィスでは課長の謝罪の声と、電話越しに聞こえる罵声が漏れ聞こえる。
自分の仕事をしつつも、なんだか気になり集中できない。
コーヒーでも入れようと思い、どうせならと課長の分も用意する。課長は、あんな見た目で甘党らしい。まあ、見た目で判断しちゃいけないけど。。
コーヒーに角砂糖を二つ。これが課長のお好みらしい。まだ、電話中の課長のデスクにコーヒーを置くと、最近よく見る甘い笑みが返ってきた。
うん、そうだよね。課長に仮面は通用しないよね。自分を納得させつつデスクに戻ると、やっと電話が終わる。
「お疲れ様です。大丈夫ですか?」
あんなに一方的に言われたら、ちょっとめげてしまいそうだ。
まあ、大丈夫だなんて言ってると佐々木さんが帰ってきた。
「二人でランチ行ってきたら?」
佐々木さんがニマニマしているのが気になったが、腹ペコなので遠慮なく課長と近くのカフェにランチに出かけた。
12:45 オフィス近くのカフェ
ランチタイムのカフェは、ビジネスマンの待ち合わせや、綺麗なお姉さん達のグループで席がほぼうまっていて、トマトパスタのガーリックの匂いを嗅ぎつつ、こりゃダメかな。。と思っていると、
「カウンター席でよろしければ。。」
カフェのお姉さんが、ちょっと顔を赤らめながら課長に聞く。
うん、分かるよ。その気持ち。イケメンが爽やかに「ありがとう」なんて言ったら、ついついときめくのは乙女のお約束。
そうして、課長との距離の近さに緊張しつつ、先ほどの空腹を刺激するガーリックのトマトパスタを待っていると、
「あれ?冴木さんじゃないか?やっぱりイケメンは美女とランチなんだね。」いや、羨ましいな~っとほんとはちっともそんな事思ってなさそうなエセ爽やかな男子が一人。
一課の係長か。非常にめんどくさそうな予感。腹ペコの私に絡むのはやめろ。
しかし、なんだかペラペラ喋っている。
「冴木さんは、いいよねー。国内だと出張は短いでしょ?僕、先月は3週間もヨーロッパでさー日本食が恋しくなっちゃってー。」
じゃあ、カフェじゃなくて、定食屋さんへどーぞ。
「時差ボケしちゃってさー、なんだか眠いんだよね。」
じゃあ、ペラペラ喋ってないで、デスクで寝ろ。
心の叫びを顔に出さずにいたら、腹ペコの私はちょっとイライラしてきた。
「冴木さんは見目がいいから、ちょっと微笑むだけで契約取れちゃうでしょ?羨ましいよー。」
へラリと笑う一課の係長。
ちょっと待て。聞きづてならない言葉。相手が係長とはいえ、これは許せないよね?
私が言い返そうとしたその瞬間、
「っ!!!?」
スカートから出た私の膝小僧に冴木課長の大きな手の平が乗った。
なぜ??なぜなんだ!しかも、親指が少し膝小僧を撫でるように動いている。
ブワッと顔が赤くなり、言い出そうとした言葉を飲み込む。
「流石に、微笑むだけでは難しいですね。
そういえば、さっき品質管理の責任者が一課が新規契約した件で原材料の確保が無理そうだって言ってましたよ。お忙しいから工場からのメール、確認してないんじゃないですか?」と課長がにっこりと言うと、
「え!!本当?」
焦りを見せつつ、表面上はにこやかにエセ爽やか係長は去っていった。
課長の手の平がゆっくりと離れた。
「ごめん。セクハラだったな。気持ち悪かった?」
ちょっと困ったように冴木課長は首を傾げながら聞いてくる。
「い、いえ。気持ち悪くないですが、驚きました。」
ええ、超びっくりしました。心臓はまだ少しドキドキとしている。
「私が言い返そうとしたのを止めようとしたんですよね?」
親指の動きに必然性は感じないが、あんなのほっとけと言いたかったんだろうな。一人で撃退してたし。
「。。うん。まあね。いつもしつこく話しかけて来るんだ。俺のことを勝手にライバル認定しててね。」
なるほど。いつもあんなじゃ、いちいち取り合ってはいられないだろう。でも、イケメンだから楽してるみたいな言い分は、やっぱり納得いかないな。
「くく、だいぶ顔に気持ちが出るようになったな。あ、いや、その方が俺はいいと思ってるんだ。それに、俺のために怒ってくれようとしたんだろ?ありがとう。」
課長の嬉しそうな笑顔は心臓に悪い。しかも仮面の事をちくりと言われ、
「だって、ひどいじゃないですか。ランチだってなかなか行けないぐらい忙しいのに。それに、工場の責任者だって、さっきの係長だってひがんでるだけじゃないですか」とつい愚痴る。
「ちょっと、性格悪く思われるかもだけど、そういうのは慣れっこなんだ。俺の見た目は生まれつきだし、今までもこの見目で色々あった。いい事だってもちろんあるが、望んでない事も多い。いちいち、落ち込んでもられないし、見目が良いと注目される分、仕事ができなきゃ余計に周りをがっかりさせる。だから、周りを気にせず仕事を完璧にやりたいと思ってるんだ。」そう言う課長に、2課への左遷や、キラキラ女子の攻撃、工場責任者の罵声、エセ係長の言いがかりなどが浮かび、なんだか私が泣きそうになった。
課長、頑張ってるのにな。頑張ってると思わせない努力をきっとしてるんだ。
「。。。課長はご自分の見目が嫌いですか?」
どうしょうもない事を聞いてしまう。
「うーん。今まで言われた事ないな。。。でも、正直、そうだな煩わしいと思ってる。努力しても、見目がいいからだ、なんて言われるとやっぱり少しへこむかな。」
課長はちょっと苦笑いしながら言う。
課長が爽やかな笑顔の裏で悔しい思いをしているのが切ないぐらい伝わった。
「課長!私は課長の外見も、中身も好きですよ!」
時が止まった。
またやっちまった。。。