執着系上司の初恋
寒い朝
華視点

目に入る光を感じそっと目を開ける。
今何時なんだろう?
目の前には、ベッドシーツの上に自分のものではないほどよい筋肉のついた腕から今は力が抜け天井を向いた大きな手のひらが見える。
その手にはすごく見覚えがある。
視線をそのままのばすと、ベッド横の窓の濃いグレーのカーテンからうっすらと外の明るさが漏れている。

そうだった。
昨日、ユウマ、、課長に抱かれたんだった。。。
腰にも回る温かな腕を感じながら、頭だけ振り返って、後ろの温もりの存在を確認する。

そこには、髪が乱れ唇を少しだけ開け、惜しみなく男らしい喉仏から陰影を作る鎖骨、胸筋を晒し、そしてこちらに伸びる腕は、しっかりとした肩の筋肉へとつながっており、全身から色気漂う全裸の麗しいイケメン様が眠っていた。
その顔は、なんだか満足気の様にも見える。
刺激の強い課長の全裸をまじまじと見て動悸を激しくしている私とは対照的だ。

うん、昨日も思ったけど、課長の欲情した全裸の姿は直視出来ないほど色気を纏う。
今は目を閉じているから、少しじっくりと観察できる。
昨日、抱かれたんだな。。。この身体に。。。。

昨日の甘すぎる夜の行為がフラッシュバックした。
泣きそうで堪える様に眉間にしわを寄せ、大きく肩を震わせながら優しく、しつこいぐらいの愛撫で私をこれでもかと甘く溶かしたその手管。
「気持ちいい?」と耳から溶けそうな甘い声で何度も囁き、耳の中にいたずらに舌を入れられ、耳たぶの甘噛みを繰り返す。
その間「ユウマって呼んでくれ」とおねだりも忘れない。
全身をくまなく辿る指、甘噛みする唇と舐め上げる熱い舌、課長の火傷しそうな温度。
課長の熱くて硬いモノがゆっくりと身体の中に入ってくると、久しぶりの情事に、入り口はひきつれる様な痛み。
思わず顔をしかめるものの、奥は丁寧過ぎる愛撫に待ち焦がれていたため、満足げに課長を迎え入れた時の身体の中心を駆け抜ける強い快感。
終わりのない抽送の間、うわごとの様に「華、華」と繰り返し、あのエロくて甘いキスを繰り返す。
奥を何度も突きつつ、手前も優しく愛撫するよう擦り上げ、わけがわからなくなった時どうやら果てて、寝てしまった様だ。

。。。朝から濃厚すぎる記憶にいたたまれなくなった。
全然酔っ払ってなかったよ。記憶バッチリです。
だから余計に考える。
優しく、課長の宣言通りに何も考えられなくなるまで抱かれたが、これで良かったのかな?
不安が襲う。
課長が私を抱いたのは、慰め?同情?優しさ?。。欲情??
ううん、課長の相手など腐る程したい相手はいるだろうから、わざわざ部下に欲情のために手は出さないだろうし、課長はそんな人じゃない。
分からない。
どうして抱いたんですかって目を覚ました課長に聞く?


、、とりあえず、目の前の色気漂うイケメンの眠るベッドからそっと抜け出た。




課長視点


先ほどまで温かさを感じていたベッドで、肌寒さを感じ目を開けると、
そこにいるべき彼女がいない。
ガバリと起き上がるが、ベッドには寝乱れたシーツと全裸の俺が一人。
外気の温度以上に、急激に俺の内部が冷やされた。
彼女は一人、帰ってしまった?何も言わずに?
彼女の寝ていた場所のシーツをぎりっと掴む。

こんな事なら、歩けなくなるぐらい抱き潰せば良かった?

、、、いや、彼女に辛い思いなんてさせたくない。

そうじゃない。身体じゃなくて、心を繋ぎとめなきゃいけなかったのに。
彼女に拒絶されるのは、心臓をえぐられるような痛みを持つからと、わざと気持ちを伝えるのを彼女の優しさにつけ込んで、抱いた次の朝でも構わないと後回しにしたんだ。

それが、この結果。

彼女のいない寒い部屋。

今まで感じたことのない強烈な孤独感。

やべえ、泣きそうだ。
36にもなって、こみ上げる思いに身体の内部が震え、また鼻の奥がツーンとして目頭が熱くなり、目を涙の膜が覆い今にも情けなく溢れそうだ。
「くそっ」
髪をかきむしる。
自分の情けない失態に言葉が出ない。








そんな時、
玄関の方で物音が聞こえた。
何も考えられないまま、ベッドを飛び降り、物音の方に部屋を駆け抜ける。

バタンッ!
力任せに浴室のドアを開けると、

そこには泡まみれでシャワーを浴びている彼女がいた。
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