執着系上司の初恋
乙女な佐々木女史は見た
「佐々木さん、おはよございます。コーヒーいかがですか?朝はブラックでしたよね?」
効果音をつけるなら、まさにキラキラ

朝から眼福です。職場に来ると若返る気がします。

始業前、今日も今日とて、かわいいアイドル宮本くんがみんなにコーヒーを入れてくれる。
ああ、こんな息子が欲しかった。。。

「今日からでしたよね、広報から新しい人来るの。」

「そうよー、なんでも転職して二年目で、海外向けのホームページ作成や、記者クラブに向けてのマンスリーリリースとか、海外投資家からの問い合わせ対応してて、あの気難しい本田取締役にも一目置かれてるって話よ。」

「えっ、なにそのハイスペック。でもうち国内担当だし、営業と広報なんて畑違いじゃないですか」

「だからさ、9月の人事異動で営業部門結構動いたじゃない。管理部門からしか人動かせなかったらしいのよ。広報の子、前の会社で営業経験があるんだって事で、人事部長が独断で決めたらしいわよ。」

「でた、川上人事部長!あの人が使えない佐藤係長をこっちに送り込んできたんですよね?大丈夫なんですかね?」

「問題ならあるわよ」
もったいつけて私の秘密の情報網からのシークレット情報をかわい子ちゃんに言う。

「何ですか?やばいんですか?」

冴木課長に心酔中のかわい子ちゃんには厳しい現実を伝える
「29才女子なのよ」

「えーっ!もう目に見えるようじゃないですか。ハイスペック肉食ギラギラ女子に俺の課長が狙われるっ!」
、、うん、予想通りの返しだねー。

「よほど、人材不足なんですね、その人事は冴木課長も了承したのだから。」とツンデレ山城氏

まあ、前情報じゃそんなに悪い事にはならない気がするんだけど。。。


始業5分前
「広報から参りました加藤です。本日からこちらに配属となりました。どちらが私の席でしょうか」

落ち着いた女子にしては低めな声ながら、不思議と温かみを感じる声に好感を持ちつつ振り返ると、グレーのスーツに身を包み、ダンボールとノートパソコンを抱える加藤さんがいた。

「私の隣なのでこちらです。」そう案内をしつつ、文子(佐々木女子の名前)の全身チェックターイムッ!
髪の毛は肩甲骨ぐらい、一本に縛っているけどサラサラで天使の輪が出来てる。お手入れ行き渡ってるわねー。
目鼻立ちは、キリッと系切れ長の奥二重、意志が強そう、、メークはほとんどしてないぐらい、ナチュラルメイク。肌のキメがすごいんだけどー。文子羨ましいぃっ!
グレーのスーツも体型にジャストフィットでデザインはシンプルなのに野暮ったさはない。つまり、ジャケットに隠れているがスタイルがいいんだって事。
爪はほとんど伸ばさず、うっすいピンクベージュのマニキュアに同系色のリップ、靴は5センチヒールのスッキリとしたグレージュパンプス

この間ざっと90秒。文子のチェックタイムは完了

結果
この子計算して地味な装いをしてる。元はいいのに、服のセレクトと、メイク、何よりもその無表情がすべてを打ち消して、なんとなく人間味に欠けるような冷たい印象。

「挨拶は後ほどさせていただきますが、本日よりよろしくお願いします。不慣れな為ご迷惑をおかけする場面があるかと思いますが、どうぞ遠慮なく指導してください。」
ダンボールを置いた偽地味子な加藤さんはこちらの目を見ながら話し、言い終わると深々とお辞儀をした。

「私は派遣だから、そんなに畏まらなくて良いのよー。」
観察に夢中になっていたら予想外の礼儀正しさに驚いた。

「派遣だろうと社員だろうとこの部で私は一番の下っ端です。教えていただくことはあっても、私が佐々木さんに教えられることなど何もありません。よろしくお願いします。」と言ってまたお辞儀をした。

地味子なんて言ってごめんなさい。あなたとってもいい子なんじゃないかしら。私の年の功が直感を告げる。
でも、冴木課長を目の前にしたら、その礼儀正しさ保っていられるかしら。。。

加藤さんは礼儀正しくみんなに挨拶すると、冴木課長より指示を受ける。

この瞬間、部内全員があなたの様子を見てるんですよっ!さあ、さあ、どうなの!

「とりあえず、加藤さんには、、」

「ありがとうございます。」
出たー。まさかの無表情っ!!冴木課長の流し目をスルー!

冴木課長も、緊張の面持ちから、気が抜けたような顔してる。


うん、うん、この子きっと良い子に違いない。
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