そのなみだに、ふれさせて。



いろちゃんの、昔からの、夢。

その夢を叶えたいろちゃんの姿は、幼い頃のわたしから見ても、とってもかっこよかった。



「さすがに元教え子と結婚するんじゃ、

学校でも立場的に居づらくなっちゃうでしょ?」



「……そう、だね」



「そんな顔しないで、瑠璃。

……あの人は高校の教員免許も持ってるから、中学を辞めたあとは、王学の教師になるんだよ」



「……はい?」



え? いま中学の教師をやめるって言ってたよね?

存在すら知らなかった彼女と結婚するって話も聞かされたよね?



あれ? うん……?

いろちゃん……王学の教師になるの?




「面白がって黙ってたの……!?」



サプライズとか、そういうつもりなんだろうか。

……ぜんぜん面白くないのに。むしろわたしは早く聞きたかったよ、と、内心つらつらとお兄ちゃんへの文句を述べていたら。



「……言えなかったんじゃないかな」



ふいに真面目な顔で、ルノくんはそう言った。

……言えなかった、って? どうして?



「結婚ってなったら、家族が増えるわけでしょ?

赤の他人だった相手と、戸籍上で結ばれる。……それに怯えてるのは、瑠璃たち弟妹だよね」



あ、と。

ルノくんの言いたいことに気づく。



「瑠璃はまだ居候中で、親のことだって解決してない。

そんな中で結婚しようと思ってるなんて、さすがに椛先輩は言えなかったんだと思うよ」



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