そのなみだに、ふれさせて。
「……やっぱり、分かりました?」
「瑠璃は基本的に遅くまで出歩かないのよ。
……ましてや連絡を忘れるなんてありえない。だけど遅くなったって連絡してきた時、声はやけに明るかった」
そのときすぐに気づいたわ、と彼女は告げる。
つまりそれは、俺が嘘をつくより前のことで。
「いつも無理して笑おうとするから。
……ありがとう。泣いてる瑠璃のそばにいてくれて」
「いや、そんな、」
「……わたしに言えないことも、あると思うから。
瑠璃のこと、よろしくお願いします」
何かしてやれたわけじゃないのに。
まっすぐに頭を下げられて、言葉が出てこなくなる。……だって、たぶん、どこかで安心した。
瑠璃の複雑な家庭環境。
でも居候先の彼女がこんなにも瑠璃のことを分かってくれている。それは俺にとってすごく大きなことで、だからこそ安心した。
「俺が言っても仕方ないですけど……
瑠璃のこと、色々と、お願いします」
ちゃんと瑠璃のことを見てくれてる。
この人のところにいたら瑠璃は幸せなんじゃないかって、真剣にそんなことを思うくらいに。
「ええ、もちろん。
今日は突然だったから準備できてなくて悪いんだけど……ぜひとも今度、遊びに来て?」
「ありがとうございます。機会があればぜひ」
「ふふっ。
瑠璃のこと送ってくれてありがとう」
綺麗に笑う彼女に、軽く頭を下げてから。
ぼんやりと色々なことを思案しつつ、本邸に帰る道を歩く。……そういや奥様に対して、啖呵切ってきたんだった。