そのなみだに、ふれさせて。
……わかってんなら、話は早い。
「そうだね」とそれを認めて、今後"浮気"になるような行動は一切慎んで欲しいと、述べようとした俺よりも早く。
『でも、全然いいんですよ?』
かえってきた言葉が衝撃的で、一瞬、何を言われたのかわからなかった。
……全然良い? 浮気されても、ってこと?
『だってわたし。
……雨音も知ってますけど、二股してますから』
「は……?」
『だから、雨音とは別に彼氏がいるんです。
あ、どっちが本命とかそういうのは聞かないでくださいね。面倒なので』
……待て待て待て。
え、なにこれ。理解できない俺がおかしいの?
『だから、全然浮気してくれて良いんですよ。
……どれだけ浮気してくれたっていいけど、でも、雨音と結婚するのは絶対わたしですから』
「………」
『御陵の名前さえ継いでくれるなら、結婚する前も、結婚したあとも。
好きなだけ浮気してくれればいいんです』
『……お前、余計なこと話しすぎだ』
ドク、ドク、と。
変に鼓動が大きく響いて聞こえる。
それじゃあ会長は、御陵の名前を継ぐためだけに、ほづみちゃんと付き合ってて。
お互いに、そこに感情はない。……それなら。その関係を結んだ上で、会長が瑠璃に手を出したのだとしたら。
会長が好きなのは。……瑠璃、ってこと?