そのなみだに、ふれさせて。
「わ、かんない……」
だって聞くだけ野暮なんだから。
それに、嫌だと言うのがわかっているのなら、そもそも頭を下げに行く必要だってないのに。
「お前がわがまま言えるようにだよ」
「わがまま……?」
「ああ。泣きそうな時も無理して笑って、ロクにわがまま言わねえだろお前。
……だからもっと、気楽に頼って欲しいんだと」
脳裏に、ついさっき泣きそうな顔で笑った南々ちゃんの表情が蘇る。
それを見て、このままじゃだめだって思った。なんとかしなきゃって思った。
だけどもしかしたら、南々ちゃんはずっと前から、わたしに同じような感情を抱いてくれていたのかもしれない。
このままじゃだめだから何とかしてあげようって、わたしに思ってくれていたのかもしれない。
「南々、ちゃん……」
ばかだ、わたし。
結局自分のことばっかりで、何も考えてない。
……何年もお世話になっておきながら、何も見えてなかった。
ななみが生まれる前からわたしはここにいて、彼女はもう2歳になった。
その2歳になった娘への愛情と、わたしへの愛情。
それが偏ったことなんて一度もないってことに、どうしていままで気づかなかったんだろう。
自分の子どもたちと同じくらい、大事にしてくれてた。
ううん。大事な大事ないっくんとの、血の繋がった子どもより、他人に愛情を注ぐ方がよっぽどむずかしい。
だって血の繋がった子どもにすら、その愛情を注ぐことができない人がたくさんいるんだから。
なのに南々ちゃんはわたしと翡翠にも、同じだけの愛情を注いでくれてた。
それが容易いことじゃないのはわたしにもわかる。
わかるから、もっともっと、はやく気づいてあげなきゃいけなかった。