そのなみだに、ふれさせて。
・溶けし青はあの日の君を誘う瑠璃
◆
「まだ泣き止んでなかったのか……
瑠璃。お前そのままだと明日の顔ひどいぞ」
「いっくんのその発言がひどいよ」
ぐすっと鼻をすすって、涙を拭う。
眠っているななみを起こしてしまわないように、もう一度リビングにおりてきたわたしと南々ちゃん。いっくんはお風呂から上がってきたけど、泣き止んでいないわたしを見て呆れ気味だ。
……だってうれしかったんだもん。
南々ちゃんがわたしを大事にしてくれてること。
「ねえ、いつみ。
今はまだ解決しないで、もうすこし瑠璃がわがまま言えるまで黙ってようと思ってたのに、どうして先にネタばらししちゃったの?」
瑠璃が分かってくれたからもういいけど、と。
言いながらわたしの頭を撫でている南々ちゃんが、いっくんを見る。
わしゃわしゃとタオルで適当に髪を拭った彼は。
「ああ、」と納得したように零して。
「……仕掛けたくせに泣きそうな顔してたからな。
さすがに放っておけなかったってことだよ」
「……なにそれ」
「たとえ相手が瑠璃だろうと。
お前のこと泣かされたら、多少は腹立つからな」
……わあ、相変わらずラブラブだ。
お邪魔だなあとは思うけど、いまはこの場から離れたくない。ぎゅっと南々ちゃんに抱きつくと、彼女はそんなわたしにくすくす笑った。
「南々ちゃん、わたし明日オムライスたべたい」
「オムライス? じゃあ夕飯はそれね」
些細なわがまま。
それすらも言えなくなっていたけど、こんな風に、ひとつずつ言えるようになっていけばいい。