そのなみだに、ふれさせて。



「お邪魔します。

……お、ななみ~。また大きくなったな~」



──土曜日。

集まるのは夕飯時のため、それよりもすこし早く家に来たのは、椛と呉羽だった。



夕帆先輩はもう既に来てるけど。

……相変わらずいつみと仲良しなんだから。



「……兄さんほんと小さい女の子好きだよね」



「俺が犯罪者みたいな言い方するじゃねえの」



「ななみに対してもシスコン発揮するのやめなよ。

仮にも社長……南々先輩の娘なんだから」



椛に抱っこされたななみは、きょとんと不思議そうな顔をしてる。でもわたしと目が合うと、「まま」と腕を伸ばしてきた。

特に今やるべきこともないから、椛からななみを受け取って。




「そういえば南々先輩。

瑠璃はまだ部屋にいるんですか?」



ちらりとリビングのソファに目をやれば、なにか話し込んでるいつみと夕帆先輩。

いつみのそばで瀬奈が何かの参考書を開いているのが見えるけど、あの子の突出した学力にはわたしも驚く。



「ううん、出掛けてるわよ。

夕飯には間に合うようにちゃんと帰ってくるわ」



彼氏と、とは言わないでおく。

そしていまはデート中なの、とも。



「あとはルノと莉央よね。

さっき莉央から、あと30分くらいで着くって連絡あったの。すこし八王子のビルに寄ってから来るんですって」



「相変わらずあいつは多忙だな~」



土曜の夜に来て、明日の予定もわざわざ確認してあるってことは、みんな泊まるつもりなんだろう。

つい楽しんで時間を忘れると子どもたちを夜ふかしさせてしまうだろうから、気をつけないと。



< 155 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop