そのなみだに、ふれさせて。
「いつみ。
ちょっとななみの面倒見てもらってもいい?」
真剣な話をしてるようだったから、すこしだけ声を掛けるのをためらったけれど。
言えば「ああ」と返事してくれるから、近づいて彼にななみをお願いする。
彼の膝の上に座ったななみに、彼女が好きなうさぎのぬいぐるみを渡して。
お利口にしているのを確認してから、キッチンに向かう。
大人たちはお酒を飲むから軽食とおつまみだけでも過ごせるだろうけど、さすがに子どもたちにはちゃんと夕飯を食べさせなきゃいけないし。
エプロンをつけて手を洗うと、冷蔵庫を開ける。
一応、夕飯のカレーはみんなが来る前に作っておいた。
温め直すだけで済むし、何より余った分は大人組が食べるだろうし。
でもそれだけじゃ子どもたちは足りないだろうから、サラダを準備しておく。
フルーツでも用意しようと思っていたけど、ちょうど夕帆先輩がケーキを持ってきてくれたから、デザートはそれだ。
「南々ちゃん~。
持ってきた酒とかおつまみ出しといていい~?」
ゆらり。
ゆるやかな声で問われて、カウンター越しの彼にこくこくとうなずく。
「あ、うん。お願いします。
わざわざ買ってきてくれてありがとう」
集まる時はいつもみんなこうやって、手土産や買い出ししたお酒、おつまみなんかを持ってきてくれる。
わたしも買い出しはしてるけど、人数が多いからすぐになくなっちゃうし。
「瀬奈。学校の課題はもう終わったんでしょう?
そろそろ、片付けてきなさいね」
「わかった」
「うん。もどってきたら手も洗うのよ」
サラダの準備をするだけで、そんなに時間は掛からない。
盛り付けを終えたタイミングでちょうどスマホがメッセージを受信したかと思うと、瑠璃が『もうちょっとで帰るよ』と一言。