そのなみだに、ふれさせて。
決めたわけじゃないけど、とりあえず近況報告からはじまるのが常。
といっても、重要事項なら連絡し合っているから、こうやって改めて話すことは特にない。
「ルアと夕陽が欠けてると変な感じしますね」
「そうね。またみんなで集まればいいじゃない。
それこそ、ルアの帰国の予定と夕陽の仕事の予定が上手い具合にかち合わないと無理でしょうけど」
ルアが帰国する期間はいつも短いし、何より夕陽に至っては休みがない。
なんせ現役の人気アイドル様。アーティスト活動にドラマに映画にバラエティに、と頑張っている彼を、テレビで見ない日がないような気がする。
……まあ、レコード会社がウチだから、仕事の関係で顔を出した時に会ったりするけど。
なかなか集まる時間は取れなさそうだ。
「ただいまぁ」
……あ、帰ってきた。
「おかえりなさい」
出迎えれば、瑠璃はにこりと笑ってもう一度「ただいま」と言ってくれる。
うしろの彼に視線を向ければ、「こんにちは」と微笑んでくれて。
「すみません、本当にお邪魔することになって。
これ、大したものじゃないんですけど良かったら」
「あら、全然いいのに。
わざわざ気を遣ってくれてありがとう」
手渡された紙袋は有名な老舗和菓子店のもの。
お礼を言ってからどうぞ入って?とリビングに促せば、瑠璃が先に「ただいまー」と扉を開ける。そして。
「……あれ。葛西連れてきたの?」
おかえりを返そうとした椛と呉羽が、目を見張る。
その代わり、マイペースにそう言ったのはルノで。